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430 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/24(火) 09 55 09 ID 8RwmUHUA 男A「皆さんごっそりいなくなりましたね」 玄霧「桜ケ丘高校の皆さんはふさぎこみ、麻雀世界の方々は大体が控室に行きましたからね」 男A「死は万人に等しく訪れるものですが、受け入れがたい事実でもあるでしょう」 玄霧「あの女性はそれだけ多くの死者と関係を築いていたということでしょうね」 男A「しかしこれで桜丘高校の方々が殺された麻雀世界の人間は延べ四人目ですか」 玄霧「運命的ですらありますね」 431 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/24(火) 11 43 14 ID gbm5Utic 海原「あれ? 此処に仕舞った筈なんですけど……」 政宗「Hey、海原光貴。 何を探してやがる」 海原「あれ、伊達さん。 福路さんに会いに行かなくていいんですか?」 政宗「Ha、まだ死んだと決まった訳じゃねえ。 労いの声を掛けるのは、こっちに来るのが確定してからでも遅くねえだろ」 海原「伊達さんらしいですね。 あ、こんな所にあった」 政宗「何だそりゃ? ジュラルミンケースか?」 海原「これですよ、これ」 【福路美穂子の左腕】 海原「池田さんに預かって貰ってたんですよ。 福路さんに持っていって欲しかったんですけど、置いていっちゃって」 政宗「おいおい、まだ死が確定してねえってのに気が早過ぎねえか?」 海原「それはそうですけど、仮面アステカー騒動の事とか色々ありましたからね。 出来るだけ早く引き取って貰いたいんですよ」 政宗「Ha、大変だなお前さんも」 432 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/24(火) 19 23 00 ID 53I0vEEU ~控え室~ 美穂子「ここは……?」 『キャプテン!!』 美穂子「そ、その声は……華菜!?」 池田「キャプテン……ついに会う時が来ちゃったし」 久「私もいるわよ」 美穂子「上埜さんまで……あぁ、そうか。私、死んじゃったんだ」 池田「ま、まだ分からないですよ! あくまでここは死亡予定者の控え室だから戻れる可能性もあります!」 美穂子「そう。なら、まだ気を抜くわけにはいかないわね」 久「福路さん、貴女はよく頑張ったわ。ここでぐらい気を抜いたら?」 美穂子「いえ。私は最後の最後まで諦めない、負けないと決めましたから」 久「強いのね」 美穂子「そんな事はありません。多くの人が私を支えてくれたおかげです」 久「……もしもの時は私の胸を貸してあげるわね。慰めてあげるから」 美穂子「え!? あの、その、上埜さんがそんな///」 久「こーら、そんなに慌てないでよ。こっちが恥ずかしくなるじゃない」ニヤニヤ 池田「……」イラッ 【キャプテン、部長&池田と共に控え室待機確認】
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221 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/19(日) 23 42 33 ID Y5ENauuI ~~たまり場食堂~~ 上条「クリスマスの予定?」 ビリビリ「えーっと、ほら、ね……せ、せっかく付き合ってんだからさ、クリスマス位何か恋人っぽい事してもいいんじゃないかなーって思って」 上条「んーと、つまり御坂さんはワタクシ上条さんとクリスマスにイチャイチャしたい、と」 ビリビリ「ストレートに訳すな馬鹿ぁ!!////」ビリビリ 上条「うわっと!! あ、あっぶねえ……いきなりビリビリは無いだろ御坂!」 ビリビリ「うるさい!! アンタはYESかNOかで答えればいいの!! 予定あんの!? 無いの!? どっちよ!!」 上条「えーと……何か用事あったかな……」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 上条「……何だろう、このウケると思って繰り出したギャグを誰も聞いてなかったかのような寂しさは」 ビリビリ「……つまり、何の用事も無い、と。 よーし、じゃあ決まりね」 上条「はあ……ま、決まったからには楽しみますかね」ボソッ 222 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 00 46 50 ID 0GOBs8nc ~小十郎の畑~ 小十郎「よし……クリスマスってのがどういうもんか詳しくは知らねぇが、こんなもんでいいか?」 部長「ええ、上等すぎるぐらいだわ……ありがとう、片倉さん」 とーか「これだけ大きなモミの木なら、立派なクリスマスツリーが出来ますわね」 アーチャー「モミの木……あれは、畑……なんだよな?」 政宗「突っ込むだけ野暮ってもんだぜ、アーチャー」 【小十郎の畑 クリスマスツリー用のモミの木伐採完了】 223 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 00 51 51 ID iJkw9pAA 黒子「な…な、な、な…なんということですの~~!!」 美琴「な…、なによ。急に現れて大声出して。」 黒子「これが騒がずにいられましょうかっ。どういうことですの!お姉様ともあろう方が…、年に一度のアニバーサリーを共に過ごす殿方がよりにもよってこんな、こんな…」 美琴「こんな…なによ?」 黒子「…こんな野蛮で品の無い無能力者なんて!いつも言っておりますが、お姉様はもっと御自分の立場を弁えて、相応しい方と付き合うべきですの!」 上条「えらい言われようだな…」 美琴「あんたねぇ、人のか…か…、その、か、彼氏をつかまえてその言い草は……ん?」 黒子「どういたしましたの?」 美琴「ふ~ん、じゃああんたの言う素敵な殿方ってどんな奴なのかしら?」 黒子「そ、それは…、そうですわね。例えば、心根が優しくて、芯が強くて、万人に分け隔て無く接することが出来て、料理や家事なんかも出来たりして、危険を顧みず他人のために戦うことが出来る。そんな方でしょうか…」チラッ そんな黒子の視線の先には… 士郎「おい、アーチャー。クリスマスパーティー用の食材、ここに置いとくぞ。生ものは冷凍庫と冷蔵庫に分けとくな。」 アーチャー「ああ、それでかまわんよ。」 美琴「…要するに、あんたは私が衛宮士郎と付き合う分には問題ないってことでいいのかしら?」 黒子「な!!?な、な、それは駄目ですの!!」 上条「アーチャーの野郎はサラッと無視ですか…」 美琴「あら~?私は素敵な殿方とやらと付き合わなきゃいけないんじゃなかったのかしら?それとも彼は素敵じゃない…と。」 黒子「す…素敵な殿方ですわ!!ですが、それはその……。!…そうですわ♪」 美琴「ん?」 黒子「お姉さまがアニバーサリーを共に過ごす相応しい相手はここにおりましてよ!」 美琴「…どこよ?」 黒子「わたくしですわ!」 美琴「ハァ?」 黒子「お姉様のルームメイトにして後輩たるわたくしでしたら何の問題も無いと思いませんの?」 美琴「あんたねえ、そんなこと言ってていいの?あれ見なさいよ。」 黒子「へ?」 セイバー「シロウ。そろそろクリスマスですね。」 シロウ「ああ、そうだな。」 セイバー「クリスマスといえばパーティー。パーティーといえば…」 士郎「はいはい、腕によりをかけて料理を振舞わせてもらうよ。」 セイバー「それは良かった。では、クリスマスイブは、その、私と過ごしてもらうということで…」 黒子「な!?だ…駄目ですのー!!」 セイバー「ク…クロコ!?」 黒子「まったく、貴女という方は油断も隙もありませんわね。」 セイバー「こういうものは早い者勝ちと相場が決まっている。行動を起こさなかったのはあなただ。」 黒子「ま…まだ、分りませんわ。士郎さんは返事をしていませんもの!」 アーチャー「ハァ…、まったく。どういう人間関係だ。」 士郎「何なんだ、この騒ぎはいったい…」 アーチャー「当の本人はこの様か。言ってて私自身むなしいが…」 美琴「黒子。セイバーの言うことも一理あるわよ。今、行動を起こさないでどうするのよ!」 黒子「お姉様……。…そう、ですわね。士郎さん!手を拝借いたしますわ!」 士郎「え?黒子…って、わ!」シュンッ セイバー「シロウとクロコが消えた!…おのれ、卑怯な!!こうなったら、エクスカリ…」 アーチャー「おい、セイバー。」 セイバー「なんですか、アーチャー。私は今忙しい…」 アーチャー「クリスマス用の料理の味見をしてもらいたいのだが。」 セイバー「うっ…、良い香りですね…。しかし、今は…」 アーチャー「ターキーにローストチキン。ケーキもあるが?」 セイバー「ぜひ、味見させていただきましょう。」 美琴「やれやれ…、世話の焼ける後輩だわ。」 上条「お疲れさん。ほれ、ジュース。」 美琴「…ありがとう……」 上条「…?どうかしたか。」 美琴「素敵な殿方の条件…か。結構あてはまってるかもね。」 上条「ん…なんだって?」 美琴「なんでもないわよ。ふふ…」 224 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 01 41 58 ID 23UVPxXc 小萌「えーっと…あっ」 美琴「あれ、小萌先生?」 小萌「探しましたよー、御坂ちゃん」 当麻「先生、御坂に何用ですか?」 小萌「大切な連絡ですよー」 当麻「大切な連絡?」 美琴「その連絡ってなんですか?」 小萌「それはですね…じゃじゃーん!ν放課後ティータイムクリスマスライブ決定のお知らせですよ!しかも…」 美琴「しかも?」 小萌「その舞台こそ、御坂ちゃんのヴォーカル復帰の舞台となるのですぅ!」 当麻「あれ、お前ν放課後ティータイムのメンバーだったのか?」 美琴「知らなかったの!?…って無理もないか。最近はラジオのパーソナリティがメインでヴォーカルは唯さんに任せっきりだったから。でも風邪をひいてる律さんと梓さんは大丈夫なんですか?」 小萌「はい、田井中ちゃんはもう全快してますし、中野ちゃんもあと一晩寝れば大丈夫って平沢ちゃんが言ってました」 美琴「そう…ですか…」 小萌「顔が暗いですよー、久々のヴォーカル復帰なんですから元気に行きましょうよ。上条ちゃんも聞きたいですよね、御坂ちゃんの歌声?」 当麻「ああ、それは確かに。こいつがどんな感じで歌うのかには興味がありますね」 美琴「うっ…よーしやるわよー!」 小萌「その意気ですよー。さてせんせーはメンバーのサンタコスチュームを用意しなければいけませんねー」 当麻「がんばれよ、御坂」 美琴「あっ、あったりまえじゃないの!(こいつといる時間が減るけど…やるからにはがんばなきゃね)」 【ν放課後ティータイムクリスマス美琴復帰ライブ 開催決定】 225 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 20 25 13 ID YZOv5HJM カイジ「クリスマスか。考えてみればこんなに大勢で迎えたのは初めてかもしれん…」 226 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/22(水) 00 35 00 ID g6hW3g.2 士郎「…で、いったい何なのさ。こんな所に連れて来て。」 黒子「……(どういたしましょう。勢いで行動してしまいましたわ。でも、お姉様がくださったこのチャンスは…)」 士郎「…?なあ、くろ…」 黒子「士郎さん!!」 士郎「は、はい!」 黒子「あの…その、クリスマスイブに何か予定は…その、ありまして?」 士郎「へ…?」 黒子「ですから、イブの予定ですわ。」 士郎「あ、ああ。そうだな…。たまり場食堂の手伝いでもしようかと思ってたんだけど。それが、どうかしたのか?」 黒子「そうではなくて。誰かと過ごすとかいうご予定は?」 士郎「んー、特定の誰かとの約束は無い…かな。」 黒子「!…でしたら、その、わたくしとご一緒してくれませんこと。」 士郎「え?」 黒子「あ、いえ、その。士郎さんもパーティーでお忙しいでしょうし、無理にとは言いませんけど。その、できれば士郎さんと一緒にクリスマスを楽しみたいんですの…」 士郎「あ…、ああ、かまわないさ。俺なんかでよければ。」 黒子「本当ですの!?」 士郎「ああ、嘘はつかないよ。あっちでは約束は果たせなかったけど、こんなささやかな誓いくらいは守らせてくれ。」 黒子「士郎さん…。約束、ですわよ。」 士郎「ああ、約束だ。」
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理想の果て(後編)◆W.hp1QcmWc 「衛宮士郎。荒療治だが、この場こそお前の力を引き出す好機だ」 「……俺の、力?」 「そうだ。お前の本質は、お前の起源は『剣』。 己が本質を胸に抱き、己が心象風景をこの世界に刻むがいい」 荒耶は言葉を紡ぐ。 士郎に固有結界を使わせるべく。 衛宮士郎の本質を。 衛宮士郎の在り様を。 衛宮士郎の理想を。 その全てを続けざまに言葉として士郎へと送る。 「? ……!?」 いきなり浴びせかけられた荒耶の言葉の数々に切羽詰ったものを感じつつも、士郎にはそれが理解できずにいた。 要するに、何が言いたいのか。 困惑する士郎の心中に入り込むかのように、荒耶の言葉は続く。 ―――悪を殺すのだろう? そう。衛宮士郎は悪を絶対に許すことはない正義の味方。 悪は、殺さなければならない。 ―――ならば迷うことはない。その理想を世界に見せつけるがいい。 俺の、理想―――? 正義の味方になるという俺の理想を世界に見せつける―――? ―――そうだ。お前にはその力がある。固有結界という力が。 そんな馬鹿な。 固有結界とは大量の魔力を消費するという、魔術師の神秘中の神秘。 それを投影しか出来ない落ちこぼれの魔術師に使えるはずが――― ―――使える。なぜならば、お前の中にはすでに剣の世界が広がっている。 ―――後はその世界を開放するだけだからだ。 剣の、世界? 俺の中の剣の世界―――? ―――そうだ。今こそ世界に侵食させよ。お前の固有結界、「Unlimited Blade Works(無限の剣製)」を――― Unlimited Blade Works。 俺の固有結界……剣の世界。 本質が『剣』である俺の――― 「―――I am the bone of my sword.(身体は剣で出来ている)」 ◇ ◇ ◇ 荒耶と士郎が問答を交わしている間、その敵たる式はどうしていたか。 式は完全に待ちの状態に入っていた。 式の立場として最も重要なのはデイパックの回収である。 あの中にある二振りの日本刀のうち、どちらかを握ることさえ出来れば、今度こそこの窮地を脱することが出来るだろう。 だが、肝心のデイパックを取るには機関銃の射線に入らなければならない。 未だ軽機関銃のトリガーに指を掛けている荒耶は問答の間にも、油断なく式の行動に目を光らせている。 うかつに飛び込めば、蜂の巣になる恐れもある。 式の身体自体を欲する荒耶が下手に式を殺すとは思えないが、目的を達成できないとあらば、どんな行動に出るかは未知数。 そんな未知数に頼って死地に赴くほど、今の式は生へのしがらみを捨ててはいない。 故に、待ち。戦略的な待機。 その眼は相手の致命的な隙を探すために絶え間なく動かす。 隙があれば、どう動くか。 その行動パターンを数通り考えついてはいた。 どちらにせよ、今は動けなかったのだが。 そして――― 「―――I am the bone of my sword.(身体は剣で出来ている)」 事態は大きく動き出した。 (ここに来て詠唱? ……嫌な予感がする) 剣士として十分に通用する敵がいきなり魔術師としての詠唱を始めたことに式は警戒。 詠唱を阻止せんと士郎に迫る。 だが、それに追従するモノが1つ。 それは式に追いつき、そして襲いかかる。 「……こいつっ!!」 「衛宮士郎の邪魔はさせぬ」 式に襲いかかったのは、澪の持っていた影絵の魔物。 すなわち、蒼崎橙子の使い魔。 澪にはアンリ・マユに汚染された可能性があると脅して使わせなかったそれだが、荒耶はあっさりと使用。 結局の所、荒耶が澪に語った事柄は全てブラフだった。 影絵の魔物はアンリ・マユを喰らったとて次回にその影響が出るような代物ではない。 全ては澪からこれを奪うために行った演技。 「―――Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で心は硝子)」 大口を開けて迫る魔物の線を切り払う式。 だが、魔物は霧散しても再度集合して式に襲いかかる。 士郎に比べれば、なんてことのない野生の雑な攻撃。 とはいえ、式も日本刀を失い、弱体化した身。 下手を打てば、殺される可能性もある。 「そこで足止めされ続けていろ、両儀式」 「……まずはこいつから片付ける必要がありそうだな」 一旦、詠唱の阻止を意識の外に置き、魔物を操る荒耶を狙う。 式はそう考え、魔物へと向き直る。 「―――I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗) Unaware of loss.(ただ一度の敗走もなく) Nor aware of gain.(ただ一度の勝利もなし)」 当初は機関銃を警戒していたが、どうやらすでに弾は尽きていたらしい。 荒耶も最早機関銃をブラフに使う気はなく、魔物の操作に集中していた。 その様子を眺めつつ、徐々に荒耶への距離を縮める式。 あくまで時間稼ぎに終始する荒耶の戦法にあえて乗りつつ、着実に目的を達成する。 そんな式の堅実さが実を結んだか。 突如、影絵の魔物はその姿を消す。 「―――む」 「なんだか分からないが、この機に仕留める!!」 あるいはこれ自体が罠かもしれぬとも思うが、今はそれに構ってはいられない。 魔物が消えた次の瞬間には式は荒耶目掛けて疾駆していた。 「―――With stood pain to create weapons.(担い手はここに独り) waiting for one s arrival(剣の丘で鉄を鍛つ)」 影絵の魔物が消えた理由は唯一つ。 その稼働時間を超過したためだ。 先に澪が美穂子を奇襲にて殺し、士郎に襲いかかった時間。 そして今回、荒耶が式を足止めするために使った時間。 それを加算すると、ちょうど先程で10分経過する頃合いだった。 「その首、貰い受ける!」 「不具、金剛、蛇蝎、」 襲いかかる式に対し、荒耶は六道結界を張る。 九字兼定無き今、結界で式を足止めが可能。 「それでオレを食い止められるか?」 式は迷わずルールブレイカーを結界に突き刺す。 その瞬間、結界が消えていく。 「なんだと……?」 「この短刀、魔術効果のキャンセルができるんだとさ。 お前の結界も”殺せる”みたいだな」 ルールブレイカーは単に契約を破棄するだけの代物ではない。 その実はあらゆる魔術効果のキャンセル。 奇跡すら起こし得る令呪による契約を破棄できるほどの代物であるが故、荒耶の結界をかき消せない道理はなかった。 「よもやそのようなものを持っていようとは……」 二枚目、三枚目と結界をあっさり破壊していく式の様子を見ながら、荒耶は独りごちる。 「――I have no regrets. This is the only path.(ならば、我が生涯に意味は不要ず)」 さらに詰め寄る式に対し、荒耶は手に持つオレンジのトランクケースを投げつつ後退。 式はそれを殺して、さらに前進。 「―――ふ」 そこで突如笑みを浮かべた荒耶。 「……何がおかしい」 「両儀式。お前はよく私をここまで追い詰めたと思うが、遅かったようだな」 「なんだって?」 「衛宮士郎の詠唱はまもなく終わる。そして、私の悲願は達成される」 その言葉を聞くが早いか、式は反転して士郎目掛けて走り始める。 無駄なことをと言わん限りの視線を荒耶から浴びつつ。 「さあ、衛宮士郎。今こそ心象世界を体現させ、根源への道を開く時だ……」 それは祈るがごとき言葉。 荒耶は己に出来る事全てを行い、達成した。 あとは士郎の成功を待つのみ。 一方、荒耶の前から離れて士郎目掛けて走る式。 嫌な予感を孕みつつも、士郎の詠唱を阻止すべく疾駆する。 ―――だが、それは決定的に間に合わなかった。 「―――My whole life was “unlimited blade works”(この体は、無限の剣で出来ていた)」 ここに衛宮士郎の詠唱は完了した。 こうして衛宮士郎の固有結界は世界に侵食する――― ………………………… ……………… …… 「……?」 ―――何も、起こらない。 詠唱を終えても、何も起こらない。 (何か間違っ……?) 「隙だらけだ」 静止した空間を真っ先に動き出した式。 詠唱を終えて呆然としている士郎の死の線を一気に引く。 「がっ……!!」 まともに死の線を切られた士郎はその場に崩れ落ちる。 これで士郎の生命は終わり――― 「ぐっ……!!」 いや、斬られる瞬間、咄嗟に下がったことによって傷は僅かに浅かった。 これにより、なんとか即死することは免れた。 「荒耶、逃げたのか……?」 士郎を一刀の下に斬り伏せた式は、油断なく荒耶の動向を探る。 だが、肝心の荒耶は既に闇の向こうへとその姿を隠していた。 何が目的だったのかは知らないが、敗走した以上は奴の目的を封じる事ができたのだろう。 ようやく式はひと息つく。 そして――― 「ぐっ、お、俺は……?」 「……お前、人間に戻ったのか?」 ◇ ◇ ◇ プシュー。 空気を押し出すような音が辺りに響き、景色は動き出す。 駆けに駆けた荒耶の向かった先。 それは先程までいた戦闘場所と同じエリアにある駅。 すなわち、F-3駅。 戦闘場所からわずか500メートルも離れていないこの駅まで数分で走破し、その勢いで東に向かって運行している電車に飛び乗っていた。 そして、電車は動き出す。 荒耶は席に座って先程までの動きを回想する。 衛宮士郎の固有結界で根源に至る計画。 先程を見ての通り、見事なまでの失敗に終わった。 それは何故か。 抑止力と簡単に切り捨ててしまうことも可能といえば可能だろう。 だが、それを防ぐために荒耶は出来る事はすべてやった。 衛宮士郎の魔力補完、両儀式との対決のお膳立て。固有結界詠唱までの道筋。 要所要所に想定外があったものの、荒耶の手腕は見事そのものだった。 これ以上は望むべくもないプロデュース。 それを以てしても計画は失敗した。 荒耶はその理由を薄々感づいていた。 「衛宮士郎に固有結界を発動させるには早すぎた、か」 そう。あの時あの場面。 衛宮士郎が固有結界を発動できるという確固たる理由があったか? ―――否。 あの衛宮士郎は自らの理想の末路と対峙しておらず、その経験すら引き出すこともなく、あまつさえ白井黒子や福路美穂子と触れ合って人間性を取り戻しかけていた。 そんな人間が自分の理想の果てである固有結界を発動できるかといえば、どうあっても難しい。 起源の覚醒を促して、固有結界の発動条件の足しにしようと目論んだが、それも全くの徒労に終わった。 結局、あの場面ではどうあっても固有結界を発動させることは出来なかった。 やるのであれば、士郎をまだまだ導く必要があっただろう。 しかし、それでも荒耶にはあの場面でしか士郎の固有結界を促す機会はなかった。 元々、荒耶は士郎をもっと長いスパンで導く予定だった。 ルルーシュ組とその他対主催組の反目を利用し、長期的に士郎を教育し、ゆくゆくは式を巻き込んで固有結界を使わせる腹積もりだった。 それが何故、このような拙速の行動をさせるに至ったか。 その理由の中核を成すのは東で起きた一方通行の5人殺害である。 薬局で起きた殺戮劇により、この場での対主催とマーダーのバランスに大きな変動が起こった。 織田信長や一方通行といったマーダーの強者は未だ健在。 それらに比べて対主催の戦力は圧倒的に低い。 ともすれば、あっさりと優勝者が出るような状態になってしまっていた。 そんな状況下で不確定な固有結界を利用するため、悠長に衛宮士郎や福路美穂子を連れて歩いていられるか? 答えは否。 ギャンブル船に向かう途中で薬局の惨事を探知した荒耶は焦らざるを得なかった。 それに続くようにして、ギャンブル船に襲いかかる大型機械。 そして、こちらへ向かう両儀式。 いくつかの事象が重なって荒耶はここで士郎を使い潰す決心をした。 それで根源に至れるのならば、よし。 人事を尽くしても至れぬのであれば、単独で退いて再度策を練り直す。 退くのであれば駅へ――― それが、今回の顛末である。 「衛宮士郎を使い潰してしまったのはもったいなかったが、致し方あるまい」 次はどうするか。 そこが荒耶の思案のしどころであった。 何をするにせよ、後は単独で根源に至る道を探るほかない。 その為には自らの身体を万全に整える必要がある。 展示場の地下から工房へ向かうのがベスト。 駅へ来たのはそういった理由によるものだ。 思案を終えた荒耶は瞑目して次の駅を待つ。 次こそは根源へ。 それのみを存在意義として、荒耶は進み続ける。 【F-3~F-5間/電車内/二日目/黎明】 【荒耶宗蓮@空の境界】 [状態]:身体適合率(大)、身体損傷(中)、格闘戦闘力多少低下、蒼崎橙子に転身 [服装]:白のワイシャツに黒いズボン(ボロボロで埃まみれ) [装備]:オレンジ色のコート [道具]:凛のペンダント(魔力残量:極小)@Fate/stay night [思考] 基本:式を手に入れ根源へ到る。 0:展示場の地下から工房に入り、身体の調子を整える。 1:体を完全に適合させる事に専念する。 2:信長を利用し、参加者の始末をしてもらう。 3:必要最小限の範囲で障害を排除する。 4:利用できそうなものは利用する。 [備考] ※B-3の安土城跡にある「荒耶宗蓮の工房」に続く道がなくなりました。扉だけが残っており先には進めません。 ※D-5の政庁に「荒耶宗蓮の工房」へと続く隠し扉がありますが崩壊と共に使用不可能になりました。 ※エリア間の瞬間移動も不可能となりました。 ※時間の経過でも少しは力が戻ります。 ※今現在、体は蒼崎橙子そのものですが、完全適合した場合に外見が元に戻るかは後の書き手にお任せします。 ※海原光貴(エツァリ)と情報を交換しました。 ※A-7の櫓に、何かしらの異常が起きた事を察知しました。 ※バーサーカーを倒したのは、ルルーシュであると確信をしています。 ※何か強力な武器が手に入ったら、信長に渡す約束をしています。 ※一方通行の異常に気付きました。 ※イリヤが黒幕である事を知っています。 [備考] ※E-3/東部にて大規模な爆発が起きました(エリアを超える程ではありません)。 どの程度まで爆音が響いたかは、後の書き手にお任せします。 ※濃姫のバンカーバスター@戦国BASARAは破壊されました。 E-3/東部の爆心地に残骸があるかもしれません ※影絵の魔物@空の境界は両儀式により両断されました。 ◇ ◇ ◇ 「……お前、人間に戻ったのか?」 怪物から人間へ。 士郎は人間へと立ち戻っていた。 その理由はやはりルールブレイカーにある。 ルールブレイカーによりアンリ・マユとのパスを切断された士郎は次第に落ち着きを取り戻していく。 汚染された精神までは戻らないが、元々鉄の意志を持つ士郎なので、新たに汚染されない限り、なんとか耐えることが出来ていた。 ……しかし。 「はは、せっかく戻っても、これじゃあ、な……」 士郎の傷は致命的であった。 ルールブレイカーによってアンリ・マユから解放されたとはいえ、直死の魔眼による傷は癒すことも出来ない。 こうしている間にも士郎の命は刻一刻とすり減っていく。 「悪いが、謝らないぜ。殺しに来るなら殺し返されても文句は言えないんだからな」 「ああ。俺は俺の信念に反した行動を取ってしまった。 なら、これは俺に取っての罰なんだよ」 「……」 「……」 沈黙。 元々、二人とも話すのが得意なタイプとは言えない。 ましてや殺しあった間柄で何を話そうというのか。 「……なあ」 「なんだよ」 それでも士郎にはその相手に話すべきことが残っていた。 今から死に逝く自分が最期に出来ることを、自分の証を残すために。 「2つ、頼みたいことがあるんだ」 「2つもか。欲張りな奴だな」 欲張りと言いつつも、式は口を結んで士郎の言葉を持つ。 この少女でも自分を殺してしまった事に負い目を感じているのか。 そう思うと、士郎は少しだけおかしくなった。 「なんだよ」 「いや、すまない。1つ目だけど、秋山に『守れなくてすまなかった』と伝えて欲しい」 「……まあ、無事会えたら伝えてやるよ」 それで2つ目は?と問う式。 士郎はしばし眼を閉じて感慨に耽る。 式はその様子を何一つ言わずに見守り続ける。 そして、士郎は再び眼を開ける。 「2つ目。白井黒子という少女を守って欲しい。 ……あいつには、死んで欲しくないんだ」 敵に頼むのもおかしな話だが、士郎にはこの少女が不器用ながらも一本筋が通った人間であることが分かっていた。 この少女になら心残りを託せる、そんな気持ちを覚えていた。 「守って欲しい、か……前に秋山がそう言ったときは刀をくれたんだけどな」 「へえ。なら、俺もそうしようかな」 守って欲しいならお前の力で刀を作れよと言うようなニュアンスで式がそんな事を言い出したので、士郎は折ってしまった九字兼定を持ってくるように伝える。 式は九字兼定を持ってきて士郎に持たせる。 「―――トレース・オン(同調開始)」 その言葉と共に士郎の魔力が九字兼定を駆け巡る。 これより始まるは剣に特化した魔術師の真骨頂。 そして、その最期の魔術。 「これが俺の最期の魔術だ。とっておきのを作ってみせる。 はぁぁ―――トレース・オン(投影開始)!!」 士郎が最期の魔力を振り絞り、魔術を行使する。 そして出来上がったもの。 それはオリジナルと寸分違わぬ出来の九字兼定と言えた。 「どうだ、出来は?」 「凄いもんだな……本物と全く変わらないように見える」 投影された九字兼定を持つ式は感心したようにして、刀を振る。 切れ味どころか、年月を経なければ手に入れられない能力までも再現されているように見えた。 「それで、俺の頼みは……」 「分かったよ。これほどまでの物を貰ったんじゃあ、聞かないわけにはいかない」 「そうか。ああ――安心した」 魔力の全てを使い果たした士郎はその言葉を聞くと、心底安堵したような声を出す。 そして始まる沈黙。 「逝った、か」 そのまま眠るようにして士郎は息を引き取った。 剣の魔術師の、これが最期の戦場だった。 「……これからどうするかな」 現状、式が取れる行動は2つある。 ホバーベースへ向かったであろう澪を追うか。 それとも、未だに謀事を企んでいる荒耶を追うか。 荒耶の行く先は不明だが、放置しておくには危険過ぎる存在であるのは確か。 ただ、荒耶を遮二無二に追っていると、澪らの危機に駆けつけられない恐れもある。 荒耶が澪を殺さなかったのは、そうして追撃の手を緩めさせる目的もあったのだろう。 「白井黒子って奴も見つけなくちゃならないな」 士郎からの最期の頼み。白井黒子を守るという約束。 刀を受け取った以上、それを無視するわけにはいけない。 「さてさて、どうしたものか」 殺人鬼は暫しこの地にて行く先を考える。 その手には想いの込められた九字兼定が握られたまま……。 【F-3/ギャンブル船前/二日目/黎明】 【両儀式@空の境界】 [状態]:疲労(小)・ダメージ(小)・切り傷多数 [服装]:白い和服(原作第五章・荒耶との戦いで着たもの) [装備]:九字兼定(投影)@空の境界 [道具]:基本支給品一式(水1本消費)、首輪、ランダム支給品0~1 、ルールブレイカー@Fate/stay night 、武田軍の馬@戦国BASARA 陸奥守吉行@現実、鬼神丸国重@現実 [思考] 基本:私は死ねない。 0:さて、これからどうするかな……。 1:当面はこのグループと行動。でもルルーシュは気にくわない。 2:澪との約束は守る。殺そうとしてくるヤツを……殺す? 3:士郎との約束に基づき、白井黒子を守る。 4:荒耶は確実に殺す。 5:刀を誰かに渡すんだっけ?もったいないな……。 6:浅上藤乃……殺し合いに乗ったのか。 7:荒耶がこの殺し合いに関わっているかもしれないとほぼ確信。荒耶が施したと思われる会場の結界を壊す。 8:首輪は出来るなら外したい。 [補足] ※A-5の敵のアジトが小川マンションであると分かりました ※以下の仮説を立てています。 ・荒耶が殺し合いの根幹に関わっていて、会場にあらゆる魔術を施している。 ・施設に点在している魔法陣が殺し合いの舞台になんらかの作用がある。 ・上の二つがあまりに自分に気付かせんとされていたこと自体に対しても疑念を抱いている。 ・首輪にはなんらかの視覚を始めとした五感に対する細工が施されてある。または魔眼の効果を弱める細工がある。 ※ルルーシュと情報交換をしました。阿良々木暦が殺し合いに乗っていると吹き込まれました。 ※平沢唯から聞いた信頼できる人間に刀を渡すというプランを憶えています(引き継ぐかは不明) ※荒耶が生きていることを知りました。 【備考】 ※F-3/ギャンブル船前にミニミ軽機関銃(0/200)@現実と澪のサザーランドが放置されています。 ※士郎のデイパックは士郎の遺体が背負っています。 ※今の九字兼定は投影品です。耐久力や存在していられる期間などは後の書き手にお任せします。 ◇ ◇ ◇ ああ、俺は今まで何をしていたのだろう。 着物の少女に斬られた瞬間、突如思考がクリアになった。 あれほど聞こえてきた呪詛も今はもう聞こえない。 今なら、衛宮士郎本来の姿に戻れる。 「はは、せっかく戻っても、これじゃあ、な……」 傷を見やると、それはもう深手に違いない。 あの少女の能力は刀剣類にとどまらず、やはり人体にも作用するものだったのだろう。 即死を避けても、迫る死に抗うほどの事は出来なかった。 「悪いが、謝らないぜ」 そう、謝らなくていい。 決定的に、根本的に間違ってしまったのは俺自身なのだから。 秋山だってこの地獄さえ見なければ、あそこまで変容することはなかった。 ……守ってやるべきだったんだ。 「2つ、頼みたいことがあるんだ」 そして、俺は切り出す。 もう何も出来ない自分に変わって、目の前の少女に全てを託すために。 本来ならば、先程まで戦っていた相手に何かを託すなんておかしな話だが、この少女は信頼できる。 なんとなく、そんな気がした。 「2つもか。欲張りな奴だな」 欲張りと言いながら、その表情は冗談を言ってるわけでもなく、至極真剣なものだ。 彼女とて怪物はともかく、人間を殺したくはなかったのだろう。 そのような負い目が、せめて願いぐらい聞いてやろうと思ったのか。 じっと言葉を待つ彼女に感謝しなきゃならないな。 「1つ目だけど、秋山に『守れなくてすまなかった』と伝えて欲しい」 心残りだった。 ギャンブル船で別れてから色々なことがあっただろう秋山。 せめてもっと早く駆けつけてやれれば、まだ救えるはずだった。 だって、あいつは……決定的なまでにこの場所に向いていない人間なんだから。 「……まあ、無事会えたら伝えてやるよ。それで、2つ目は?」 2つ目、か。 言う願いは決まっている。 あいつと共にいた記憶が頭を駆け巡る。 ある時は俺を止め、ある時は俺を諭し、ある時は共に歩んでくれたあいつ。 黒子……。 「2つ目。白井黒子という少女を守って欲しい。 ……あいつには、死んで欲しくないんだ」 黒子。あいつにだけは死んで欲しくない。 俺が死んだら、あいつは悲しむだろう。 また縋るものがなくなって悲嘆にくれるかもしれない。 だが、それでもあいつはまだ生きている。 そして、俺はあいつに生きていてもらいたい。 ……俺の分まで、生きて。 「守って欲しい、か……前に秋山がそう言ったときは刀をくれたんだけどな」 刀、か……。 さっきまでの俺を見て言ってるのか。 なら、残り少ない魔力が尽きようとも、衛宮士郎として最期の魔術を、最期の投影を以て、彼女との誓いを立てよう。 「―――トレース・オン(同調開始)」 九字兼定か……この戦場にはこんな名刀がいくつもあるんだな。 不思議とこの刀は目の前の少女に似合う気がした。 「これが俺の最期の魔術だ。とっておきのを作ってみせる。 はぁぁ―――トレース・オン(投影開始)!!」 魔術回路が全て焼き切れてもいい。 今はこいつを、万全以上の九字兼定を作り上げることに集中する。 そして、九字兼定が出来上がった。 「どうだ、出来は?」 「凄いもんだな……本物と全く変わらないように見える」 随分嬉しそうに刀を振る少女だ。 よほどその刀に思い入れがあったのか。 オリジナルを壊してしまって、悪いことをしただろうか。 まあ、そんな事はどうでもいい。 今、俺が聞きたいことはそんな事じゃない。 魔力も使いきって、最期は近い。 「それで、俺の頼みは……」 「分かったよ。これほどまでの物を貰ったんじゃあ、聞かないわけにはいかない」 少女は断言するように言った。 この刀を以て契約を受け入れると。 力強いその言葉を聞けば、黒子の事を迷うことなく託せるだろう。 「そうか。ああ――安心した」 いつしか、どこかで聞いたような言葉を俺は発していた。 どこかで―――そう、この言葉は爺さんが放ったものだ。 爺さん、あんたが逝く時もこんな想いを抱いていたのだろうか。 俺に全てを託し、安心して逝ったのだろうか。 だとしたら、爺さんには悪いことをしたな。 ―――爺さん、俺も正義の味方にはなれなかったよ。 【衛宮士郎@Fate/stay night 死亡】 時系列順で読む Back 理想の果て(前編) Next ひたぎエンド(ビフォー) 投下順で読む Back 理想の果て(前編) Next 正義の味方 284 理想の果て(前編) 衛宮士郎 GAME OVER 284 理想の果て(前編) 荒耶宗蓮 289 絆キズナ語ガタリ 半端者・阿良々木暦 284 理想の果て(前編) 両儀式 285 正義の味方
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サイキッカーバトルロワイアル 本編 サイキッカーバトルロワイアル本編SS目次・投下順 サイキッカーバトルロワイアル の死亡者リスト サイキッカーバトルロワイアル の参加者名簿 サイキッカーバトルロワイアルのルール・マップ
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大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (1) ◆XIzIN5bvns 『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。』 とあるSF作家が定義した法則の一つを、グラハム・エーカーは思い出す。 この身を切る夜風はとても涼しげで心地がいい。やや強めの向かい風を受けながら、グラハムは思考の海に身を沈める。 例えば、ある意味では自分もまた『魔法』が一般的な世界に生まれ育ったとも言えるのでは無いだろうか。 地球と宇宙を結ぶ、巨大な軌道エレベーター。各国の兵士たちが駆る人型起動兵器、モビルスーツ。 その中でも特別な存在であるガンダム、それの心臓部である太陽炉。 彼にとって常識であるこれらの存在は、過去の人々にとってはまるで空想の中のマジックアイテムのように見えるのでは無いのだろうか。 そう、数百年前に日の本の地を駆け抜けた戦国武将と呼ばれる人々にとっては、特に。 ……最も、流石にそんな人間がこの会場にいるとは思えない。あくまで、もしいたとしたらの話ではあるのだが。 (乙女座の私としては、ロマンチズムを感じずにはいられないな…) 「グラハム! 何かが見えてきたぞ、あれがギャンブル船では無いのか?」 微笑を浮かべながら物思いに耽っていたグラハムは、同行者の声によって現実に引き戻される。 可愛らしい少女が小さな手で指さす上空を見てみれば、木々の間から宵闇に浮かび上がる巨大な船影が覗いていた。 ライトアップがされているのだろう、おぼろげに浮かび上がるその姿は一種異様な威圧感すら感じさせる。 だが、今は自分の腕の中にいる小さな同行者―天江 衣にとってはそうでは無いらしい。 「ギャンブル船では、麻雀が出来るかな…? 衣は早く、沢山友達を作りたい!」 サラサラとした金髪をたなびかせながら、衣は楽しげに柔らかな黄色いマスコットを抱きしめる。 年相応に無邪気なその行動は、まるでテーマパークへ行くのが待ち切れない子供のようであった。 (こんな状況でなければ、心を和ませる光景なのだがな) 衣に気づかれぬように小さくため息を付きながら、グラハムは己が手の先にある『モノ』に意識を集中させる。 グラハムは、『魔法』という不可思議な物の存在を信じている訳では無い。 確かに、そのようなファンタジックな概念自体は彼にとっては好ましい物ではあるが、かと言って現実に存在するのかと聞かれれば否と答えるだろう。 『我々は金で魔法を買った』 遠藤という、この殺し合いの進行役を名乗った男が告げたそれは、ある種の名言ではある。 しかし、ただのハッタリにしか聞こえない事もまた事実。 そんなオカルトありえません、などという声がどこからか聞こえてきそうだ。 だが、グラハムは『魔法』とも言うべき事象に遭遇してしまった。目の前で、まざまざとそれを見せつけられてしまったのだ。 「それにしても、お前は凄いな。電光石火、疾風怒濤! もう目的地に目前にまで迫っているぞ!」 キャッキャとはしゃぎながら、衣は背後の男が駆っている『モノ』の首を撫でてやる。 その手付きがくすぐったいのか、はたまた心地良かったのか。衣の手に反応して、『モノ』はブルリと震え、小さく嘶いた。 その『モノ』――いや、仮にも生物に対して『モノ』と呼ぶのは失礼に値するだろう。 その『生物』は、『馬』。赤い装飾をその身につけた、巨大な軍馬。 天江 衣に支給された支給品の一つ、であった。 ※ それと邂逅したのは、トンネルの調査を終えてギャンブル船へと向かおうとした直後の事。 沢山の友達がいる世界を作る、そう豪語して足取りも軽やかに先を行く衣の背中を見送った時にその異変は起きた。 衣が背負ったディパックの口から、突如として馬の首が生えたのだ。 これには流石のフラッグファイターも度肝を抜かれた。 しかも、生えてきた馬の首はどうやら生きているようであり、徐々にその体をディパックからはみ出させていく。 『な、なんだ? 急にディパックが重く…なんだ!? グラハム、衣のディパックはどうなってる!?』 と怯えた様子を見せるディパックの主の事などお構いなしに、馬はその身を窮屈だったであろう空間から脱出させ、晴れて雄大な大地へと帰ってきた。 ある意味、少女による馬の出産という異常な光景を最初から最後まで見せられたグラハムも、 重さから解放された事でようやく後ろを見て、突如として現れた馬の姿を認識した衣も、ただ茫然と目の前の光景を見ていることしか出来ない。 ディパックから馬と同じくひらひらと飛びだして、足もとに流れ着いた紙切れ――― 『武田軍の馬。天下が誇る武田騎馬隊の要。こちら側で特別に躾けた為、素人でも乗りこなすことが可能です』と書かれたそれにグラハムが気づいたのは、数分ほど後の事であった。 ※ ギャンブル船は、エリアB-6の北部、廃村の港部分に当たる場所にしっかりと存在していた。 ここに至って、トンネルに続きギャンブル船もまた地図通りの場所に設置されている事が判明する。 とは言え、まだ確認が取れたのが二つきり。 もう二~三の施設をこの目で確認するまでは、『各参加者の地図の情報に差異がある』という仮説を否定するには尚早だろう。 タラップから船内の駐車場に侵入し、ひとまず適当な場所に馬を止めながら、グラハムはこの先の予定を考える。 経緯はどうあれ、支給品の中に馬が合ったのは僥倖と言えるだろう。 バイクや車などとは速度面では比べるべくもないが、先ほどまで自分達がいたような森や山のような悪路を進むには都合がいい。 同行者が衣のような小柄な少女である事もあって、二人乗りでもなんら移動に支障がない事は今しがた確認したばかりだ。 支給された地図に情報操作がないとすれば、この会場の半分以上は舗装もされていない自然のままであるようだし、 これから先は地図内の施設を回ろうと計画しているグラハム達にとっては願ったりかなったりだろう。 だが、一つだけ。 「グラハム。この馬は、ここに置いて行くのか?」 説明書きの通りに良く躾けてあるのだろう。 見知ったばかりの主の命令ですらも忠実にこなし、素直に駐車スペースに佇んだままの馬を撫でてやりながら、衣が不安げに尋ねた。 彼女の言わんとしている事はわかる。船内まで馬に乗って行く事は流石に出来ない以上、一旦適当な場所に留めて行く必要がある。 だが、起動にキーが必要な車類ならいざ知らず、ただの馬がむきだしに置いてあるのでは、他人に奪われる恐れも大いにあり得た。 しかし、こればかりはどうしようもない。 「仕方ないだろう。こればかりは、運を天に祈るしかあるまい」 「………そうだな。いいか、知らない人間に付いて行ったりしてはダメだからな。 衣達が帰ってくるまで、いい子で待ってるんだぞっ」 グラハムの言葉に一瞬悲しげに眼を伏せた衣であったが、すぐに馬を元気づけるかのように笑顔になり、そう呼びかける。 呼びかけを受けた馬の方もまた、それに答えるかのように少女へと顔を寄せた。 互いに、随分と懐いてしまったようだ。 「わっ、こらっ…くすぐったいぞ」 叱るような声をあげた衣の方もまた、その表情は輝くような笑顔だ。 殺し合いという血なまぐさい場所において、なんとも心を和ませる微笑ましい光景に一瞬頬が緩むが、 ふとグラハムは衣の腕の中にいる黄色いマスコットへと視線を向ける。 衣の体より一回り小さい程度のそのぬいぐるみは、小さな黒い帽子に眠ったような目で微笑みを浮かべていた。 『チーズくんのぬいぐるみ』、というのがそれの名前であるらしい。軍馬がディパックから飛び出してきた際に、 一緒にこぼれ落ちてきたのが発見のきっかけとなった。 かなり大きめのそれは小学生程の体型の少女にはかさばる荷物であるが、彼女は決してそれを離そうとはしなかった。 と言っても、それは単純にこの可愛いマスコットが気に入ったからという理由では無いようだが。 『このぬいぐるみは、【しーしー】という参加者の大切な物らしい。だったら、衣がその人に届けてあげて、衣と友達になってくれるようにお願いするんだ!』 ぬいぐるみについての説明書きを読んだ後の衣の言葉だ。 その身に抱きながら離そうとしないのは、そうしておいた方が【しーしー】…もとい、【C.C.】なる参加者が見つけやすいからだろう。 グラハムとしては何度か説得も試みてはみたが、彼女の意志は固かった。 詳しい事はわからないが、ぬいぐるみが縁で友達を作る、という事になんらかの拘りがあるように思えた。 ともかく、押し問答を続けても仕方あるまい、とグラハムの方が先に折れる事になったのだが………。 閑話休題。気になるのは、それとは別の事だ。 先ほども述べたように、このぬいぐるみはかなりの大きさだ。 そう、馬はもちろんの事、このぬいぐるみ単体でも他の基本支給品と共にディパックの中に詰め込める物では無い。 (容量がほぼ規格外のディパック、か……これは超高度に発展した科学の産物か、それともマジックアイテムなのか…) 苦しい仮説を立ててみるならば、主催側にはかのイオニア・シュレンベルグのような超天才が協力者として技術提供を行っている、と見る事も出来るが、 判断材料が少なすぎる現時点では、それこそ実際に『魔法使い』が協力している、という仮説と信憑性は変わらない。 もしもこの場に、己が親友であるビリー・カタギリがいたならば、もっと正確な予測を立ててくれたかも知れないが、結局は無い物ねだりだ。 「何をしているんだ、グラハム? 早く先を急いで、麻雀をしに行こう! ルールは衣がちゃんと教えるから心配しないでいい!」 そんな事を考えている内に、幼い相方は痺れを切らしてしまったらしい。 大きなチーズくんを抱きしめたまま、急かすように足踏みをしてこちらを見ている彼女にやれやれと苦笑を浮かべると、 グラハムは衣を伴って船内へと足を踏み入れた。 ※ 地図上には『ギャンブル船』と記されていたこの施設であったが、どちらかと言えば『豪華客船』と呼んだ方が差し支えがないのではなかろうか。 廃村の港にて外観を眺めた時から感じていたが、この船は途轍もなく広大だ。 途中途中で、『順路・ギャンブルルームはこちら』と書かれた表札がなければ、特定の目的地にたどり着くのは困難であっただろう。 逆を言えば、この船の適当な客室に紛れ込んでみれば、追手を撒く事も出来るのかも知れないが。 閑話休題。表札の道案内が存在していたお陰か、グラハム達はすぐにギャンブルルームへとたどり着く事が出来た。 上部に『ギャンブルルーム』と書かれたシンプルな看板を携えた、巨大な両扉を前にしてグラハムはそのノブに手をかけた。 ゆっくりと、そのドアを押し開く。いざという時の為に、片手にはコルト・パイソンが握られている。咄嗟の事態にも対応は出来るだろう。 少しずつ広がっている隙間から、部屋の中の様子を窺う。 扉の巨大さと同じく、そのホールもまた巨大な空間が広がっていた。 人間がゆうに百人は入るのではないかと思わせるスペースに、幾つか遊戯台らしきものが見える。 吹き抜けとなっている高い天井に、二階部分へ登る階段までが見受けられる。 上にもまた、別の遊戯台が用意されているのか、それとも全く別の何かが待ち受けているのか。 そして、観音開きになった扉の向こうから、乾いた破裂音が耳に入ってきた。 ――――パン、パン、パン、パン。 しかし、それは命を刈り取る為の凶弾が放たれる音では無い。 「ようこそ、ようこそ…………!」 若い男の声が聞こえる。グラハムの物とは別の第三者によるものだ。 破裂音と声、双方の発信地はホールの中央部から――そこに、一人の男が立っていた。 「ここはギャンブル船……希望の船『エスポワール』のギャンブルルーム……!」 黒づくめのスーツに、真っ黒いサングラス。とても堅気の者には見えない服装をした男が、パン、パンと手を鳴らし続けながら口上を続けている。 そして、その首には、首輪が存在していなかった。 それに気づいたグラハムの目が僅かにしかめられる。参加者全員に枷として嵌められている筈の首輪、それがないという事は即ち――― 「私は、このギャンブルルームにて……ディーラーとして、本部から派遣された者だ……! 参加者間で行われる、ギャンブルの監視役としての命も受けている……!」 グラハムの脳裏に浮かんだ疑問を即座に見抜いたかの様に、黒服の男は自分の立場を説明する。 ここに至って彼はようやく拍手を続けていた腕を止め、ホール内に設えてある様々な遊技台を指し示し始める。 「ここにはありとあらゆるギャンブルが揃っている……! ルーレットやポーカー、ブラックジャックのようなメジャーな物も……! 花札やチンチロリン、チェス、麻雀などもある……! 麻雀については、パソコンを通じてのネット麻雀も完備している……!」 麻雀、という言葉に反応するかのように、衣のリボンがピクンと動く。 黒服が指し示した台を見てみれば、確かに見なれた麻雀台が存在していた。 (やっぱりここでは麻雀が出来るんだ…! 衣にも、色んな友達を作れる場所があるんだ!) 少女の喜びを如実に表すかのように、リボンがゆらゆらと揺れ動く。 感激のあまり普段以上にきつく抱きしめられたチーズくんは苦しそうにも見えたが、今ここにそれを気にする人間はいない。 「他にも、オリジナルのギャンブルとして…! Eカードに、特設ルームにて行われる『勇者の道』(ブレイブ・メン・ロード)…! 女性参加者限定だが、特別な水着を着用した上での、水上アスレチックレースなども用意させてもらった……!」 黒服は、ただ淡々と説明を続ける。 Eカード、という言葉と共に指さされたのは、『先攻』、『後攻』、そして『皇帝』、『奴隷』、『距離』などという奇妙な言葉と表が描かれているホワイトボードだ。 そしてまた、ホールの奥の方を見てみれば、傍に『この先、特設会場』と書かれた立札のあるドアがあるのが確認できた。 『勇者の道』(ブレイブ・メン・ロード)、そして水上アスレチックという物の詳細は分からないが、 何やら大がかりな設備が必要なギャンブルという事なのだろうか。 女性限定、という枕詞に主催側のいささか無粋な思惑を感じ、グラハムの顔が微妙に歪んだ。 「また、このギャンブルルーム及び特設会場でのみ…参加者間での戦闘行為はすべて禁止とされている……! このルールに違反すれば、その時点で首輪が爆破される……! それには、ディーラーに対する攻撃も含まれている……! 妙な気は起こさない事だ…!」 そう言う男の視線は、グラハムの片手へと注がれている。そこに、自分を殺しうる拳銃があると知った上での警告……いや、脅迫か。 癇に障る部分が無いわけではないが、無理を通して命を散らすのはそれ以上に馬鹿馬鹿しい。 無言のまま、グラハムはコルト・パイソンをディパックの中へと仕舞った。 戦闘行為が全て禁止されているという事は、裏を返せば自分たちの身の安全も保障されているようなものだろう。 よほどの事がない限りは、主催側から自分達の命を奪う可能性も低い。 「しかし、だからと言ってここは避難場所でも、休憩場所でもない……! ギャンブル中などの理由がある場合を除き……ただ単にここに留まり続ける事は許可しない……! そのような行動が見られた時は、力づくでの強制退去…最悪の場合は首輪の爆破も視野に入れている…! くだらない希望は、捨てておく事だ…!」 付けくわえるように更なる警告を行い、男は僅かでも殺し合いから逃れられる術を潰す。 主催者は、どうしても自分達に心休まる時間と場所を提供したくない心づもりのようだ。 「そう、この空間での勝負は全てギャンブルにて行われる……! ランダムに参加者に支給された、ペリカさえあれば…また、それが無くとも別の代償を払えば…! その時点で、何者であろうとギャンブルに参加する権利が与えられる…! ここは、ありとあらゆる逆転(ミラクル)が起きうる場所……! 起死回生の一手によって、奴隷が皇帝を打つ事も……! 身体的強者を、身体的弱者が思うまま蹂躙する事さえありうる……!」 両手を広げながら、黒服は更にルール説明を続ける。 この殺し合いの舞台に置いて、異彩を放つ『ギャンブル船』の特別ルールを、初めてのルーム入場者たる二人の参加者へと解説する。 「改めて歓迎しよう、グラハム・エーカー、天江 衣……! ようこそ、希望の船『エスポワール』のギャンブルルームへ………!」 再び、男の両手が一つに重なり、数回ほどの乾いた音がホールに響く。 それを最後に、ギャンブルルーム内を沈黙が支配する。物音一つしない静寂。 静かな事が逆に耳に痛い事もあるのだと、ふと衣はそんな事を思った。 「……幾つか質問したい事がある。いいだろうか」 銃を仕舞い、丸腰となったグラハムが黒服へと尋ねる。 しばらくその顔を見つめていた男は、ゆっくりと頷いて口を開いた。 「答えるかどうかはこちらで判断させて貰うが、それでも良いのならば聞こう…」 「それは僥倖。こういった状況では、僅かなりとも情報は貴重だ。ありがたく情報収集をさせていただこう」 ふ、と浮かべた微笑は主催側への皮肉が込められた物なのか、それともただ単に喜びから洩れた物なのか。 二人の会話を横で眺めることしか出来ない衣には、判断は出来なかった。 なんとなく、チーズくんに半分顔をうずめる。 「まず、一つ。ここにいるディーラーは、貴方一人だけなのか?」 「……主催側から派遣された人間は、俺一人きりだ」 「ふむ……それは妙だな。たとえば、これは純粋な疑問から尋ねたいのだが… 複数人の参加者がここに現れ、不意を打ち、悪意を持って貴方に襲い掛かったとして…即座に全員の首輪を爆破する事が出来るのか?」 そう言いながら、グラハムは目の前の黒服の男を検分する。 服装や立ち居ふるまいから言って、少なくとも堅気ではなく裏…たとえば、ヤクザやマフィアなどに属していそうな雰囲気は持っている。 が、かと言って武術武道の達人に見えないのも確かだ。 常人ならばともかく、グラハムのような訓練を受けた軍人複数相手に対応しきるのは、不可能なように思えた。 だが、そんな質問を受けても黒服の顔色は変わらない。 「確かに、俺一人では不可能だ……だが、首輪爆破の指示を出すのは、俺では無くここを監視している外部…… つまりは、本部の人間だ…たとえ俺を殺したとしても、参加者達の末路は変わらない…!」 「監視……だと?」 思わず、ルーム内へと目を走らせてみれば、天井や壁など数か所にカメラが設置されているのが程なく見つかった。 ここの部屋の状況は、逐一リアルタイムで殺し合いの主催側へと流れているという事か。 ぞっとしないな、と思わずグラハムは肩を竦めた。 「しかし、それでもたった一人でここのディーラーを務めるのは骨が折れそうだな。 今回は二人きりだったからいいが、それ以上の大人数がここでギャンブルを始めたとすればどうする?」 「問題ない……人間は俺一人だが、協力スタッフはちゃんと用意してある……!」 黒服の男がしばらく懐の中を探り、そこから小さなベルを取り出す。 それをリン、と涼やかな音で鳴らせば、数秒もしない内に上、ホールの二階部分からガタゴトという物音が聞こえてきた。 何事かと二階へと続く階段を見てみれば、サッカーボール程の球体がこちらへと向かってくるのが目に飛び込んでくる。 『ハロ、ハロ』 『ギャンブル、ギャンブル』 『ザワ、ザワ』 「うわぁ……!」 それも、大量に。色取り取りの、おもちゃの様な球体が、羽のような両サイドの板を動かしながら飛行したり、転がったりしながら降りてきていた。 「ぬ、ぬいぐるみが動いてる!? 凄い、あんな物衣も見た事がないぞ!」 「MS……ではないな、流石に…小型の、ロボットか?」 ある意味ファンタジックな光景に、子供っぽい精神が刺激されたのだろう。衣は目を輝かせながら転がってくる球体達を眺めている。ぴょんぴょんと跳ねはじめたりもする始末だ。 対するグラハムは、多少驚きはしたものの冷静だった。 元より巨大なMSが闊歩する世界にて生まれ育った身であり、小型ロボット程度の科学技術ならば見慣れている。 そもそも、この球体ロボットはグラハムと同じ世界から集められた存在なのだが、グラハム自身はその事を知る由もない。 黒服は、自分の足もとに転がってきた適当な一体をつかみ取り、解説を続ける。 「ギャンブルの監視、及びディーラーはこの小型AI、『ハロ』達も行う。人員的問題は全てクリアされている……! 見ての通り、これらにはまともな手足が無いが…」 『ウソ、ウソ! テアシ、アル! テアシ、アル!』 その説明が気に入らなかったのか、手の中のハロはバタバタと暴れ、やがて上下の両サイドからニュッと小さな手と足を生やした。 予想外のギミックに衣が「おぉ…!」と歓声を上げたが、それらを意に介さないままに黒服はハロをホールの奥へと運んで行く。 そして、ホールの隅に並んでいたロボットらしい物体の上部、半円状の穴のあいた部分に腕の中でジタバタと暴れるハロを押し込んだ。 『ハロ、ハロ! ガッタイ、ガッタイ! ゴー、ゴー!』 ロボットと接続されたのに反応し、ハロの両目が赤くチカチカと輝く。 それに合わせてモーター音のような物が聞こえだし、やがてそれまで全く動かなかったロボットがゆっくりと立ち上がった。 頭部を排除した人型のような姿をしたそれは、何度か確認するように両腕を動かし始める。 それを見届けた黒服は、再びグラハム達の前へと戻り、ハロが搭載されたロボット、小型MSもその後に続く。 「この通り、ハロを搭載する事の出来る小型MSによってそれを補う…! 各種ギャンブルのルール、テンプレートは既にプログラミング済みだ…!」 『トランプ、キル! トランプ、キル! シャッフル、シャッフル!』 ハロの方はパフォーマンスのつもりなのか、手近な遊技台にあったトランプを手に取るとその場でシャッフルを始める始末だ。 しかし、グラハムの目から見ても、その手付きは鮮やかでありAIのプログラミングには見えない程なのも事実。 ふと傍らの衣の様子を見てみれば、まるで魅入られたかのように感心した表情でハロのトランプさばきを眺めていた。 (全く、良くも悪くも子供らしい) 一瞬だけクスリと小さく笑みを漏らし、本人が聞けば再び激怒しそうな事を考えながら、グラハムは黒服の男へと視線を戻す。 「ここがギャンブルルームとして問題なく稼働出来る事は理解した。 そして、ギャンブルを行うためにはランダムで支給されたペリカが必要らしいが… それを増やすことが出来たとして、メリットが得られるのは優勝後に限定されてしまうのではないか?」 「いや、それだけに留まらない……! 優勝後に限らず、この会場において、所持ペリカを増やす事によるメリットはちゃんと存在している……! これを見てみろ…」 グラハムの疑問に首を振って答えた黒服は、すぐ傍の遊戯台の上に置いてあった一冊の分厚いファイルを差し出す。 ずっしりとした重量のあるそれを捲って見れば、まず最初に飛び込んできたのは黒光りする拳銃の写真がいくつかと、 それぞれにつけられたネームプレート、そしてペリカ表示の札だった 『トカレフTT-33』 【800万ペリカ】 『デリンジャー』 【600万ペリカ】 『ベレッタM92』 【900万ペリカ】 『RPG-7(グレネード弾×3、煙幕玉×2付属)』 【2500万ペリカ】………… 「なるほど、ペリカと引き換えに武器となる銃器を購入できる、と……」 「銃器類は、特別な付記がない限りは装弾数分の弾丸も込みで支給する……! ただし、それ以上の予備弾丸、弾倉はまた別途購入してもらう……!」 解説を聞きながら更にファイルを読み進めてみれば、後半に行くにつれて奇妙なアイテムまで見受けられるようになってきた。 曰く、桜ヶ丘高校軽音部のデモテープ、特殊繊維製伸縮自在の水着、ピザハット特別ピザ詰め合わせセット、etc,etc……。 殺し合いに何ら役に立つとは思えないそれらは、やはり価格設定も【5000ペリカ】、【100ペリカ】、【1ペリカ】などと極端な値段が付けられている。 「銃火器の類…殺しあいにおける重要度が高い物であればある程高額という事か。合理的かつ分かりやすくはあるが、それにしても随分と暴利だな」 「価格設定に対する不満は受け付けない……!」 やれやれ、にべもない―と一通り目を通したファイルを閉じた後で肩を竦める。 さて、どうしたものか。先の馬の件もあり、衣と共に自分の支給品を確認してはみたが、ペリカらしき物は入ってはいなかった。 銃火器類の購入、という特典は魅力的ではあるが、先立つ物がないのでは意味がない。 ならば、ここは素直に退出するという選択肢しか―― 「………グラハム。衣は、ここでは麻雀が出来ないのか?」 傍らから聞こえた、消え入りそうな小さな声。 見てみれば、いつの間にか遊戯台に積み上がっていたトランプタワーを前に泣き出しそうな瞳の少女が存在した。 『ハロ、ハロ?』 早くも二個目のトランプタワーを完成させようとしていたハロが、気遣うような声を漏らす。 しかし衣はそれに応じる事もなく、ただグラハムをじっと見つめていた。 「衣は……友達を、作れないのか……?」 きゅ、と可愛らしい迷子のマスコットを抱え、まるで捨てられた子犬のような眼差しを向ける様は、その手の筋の人間が見れば理性を一瞬で剥ぎとっていたであろう。 だが、グラハム・エーカーはそのような特殊性癖を持ち合わせてはいない。 「残念だが、そうなるな……ペリカという元手がない以上、ここで麻雀を打つ事は出来ない。 いや、そもそも同行している我々同士でギャンブルを行った所で大して意味がないというのも実情だ」 「ペリカやギャンブルなんてどうでもいい! 衣はただ、グラハムや他の誰かと麻雀で遊びたいだけなんだ! ……それでも、ダメなのか……?」 「……………これは難問だな」 幼い少女の健気な訴えを聞き、流石にグラハムの良心が痛みを覚え始める。 しかしこればかりはグラハムがどう努力した所でどうにかなる問題では無い。 ならばどう説得した物か……おねだりしてくる娘のあしらい方の重要性を、こんな状況下で嫌という程に身につまされるとは、流石のフラッグファイターも予想出来なかった。 「………ペリカが無くとも、ギャンブルをする方法はある…」 「…っ、それは本当なのか!?」 気まずい沈黙を破ったのは、意外な人物。 このギャンブルルームの主とも言える、黒服の男が告げた言葉を聞き、衣の顔に笑顔が浮かび、グラハムの顔に驚きが浮かんだ。 「最初に言っていただろう……。 ペリカが無くとも、別の代償を払えば、ギャンブルへの参加資格は与えられる……! その代償は、天江 衣…お前だけでなく、一人を除き参加者のほぼ全員が払う事の出来る物だ…」 「じゃあ…じゃあ、今の衣でも麻雀を打てるんだな! あ…けれど、グラハムの言うとおり、私とグラハムとがギャンブルをしても詮無き事……」 太陽のような笑顔を見せた衣だったが、すぐに先ほどグラハムに教えられたもう一つの問題に気づき、再び顔を曇らせる。 グラハムと衣が一つのグループとなっている以上、そのグループ間でペリカやそれに準ずる物の遣り取りをしてもメリットは得られないのだ。 だが、それに対しても黒服は一つの対案を提示する。 「問題は無い……ギャンブルは参加者間で行われるだけでなく、こちら側……主催側と行う事も出来る…… 麻雀に関して言えば…こちらで3人までメンツを用意する……そのメンツを下す事が出来れば、点数に応じたペリカを与えよう…!」 男の説明に応じるかの様に、ハロを接続した三体の小型MSが麻雀台の近くへと移動し始める。 『ワハハ、ワハハ!』 『ウム、ウム!』 『タコスダジェ、タコスダジェ!』 ぱたぱたと頭部側面の板を開閉させながら、紫、黒、橙のハロがそれぞれ奇妙なセリフを飛ばす。 なんだかどこかで聞いたような記憶があるように感じたが、衣はそれを疑問に思うだけの余裕はなかった。 その心に満ち満ちている物は、深い喜び。 ――衣の友達が、増やせるかも知れない! 『ヤッタネ、コロモ! ヤッタネ、コロモ!』 衣の感情を察したかのように、トランプを自由自在に操っていた先ほどのハロが賞賛の声を上げた。 うん、と嬉し涙まで浮かべながら元気よく頷いた衣は、トテテと可愛らしい足音を立てながら麻雀台まで向かおうとし、 「―――――失礼」 「ふにゃっ!?」 その腕を、他ならぬ同行者の手によって掴まれた。 小さく告げられた謝罪の声に含まれていた緊張に気づかぬまま、衣は思わずグラハムの顔を睨みつけた。 「何をするんだグラハム! グラハムは、衣が衣の友達がたくさんいる世界を作るのを邪魔する気なのか!?」 「誓ってそんなつもりは無い。だが、それをするのはもう少しだけ待っていて欲しい。…肝心な情報をまだ聞いていない」 少女を強引に引きとめた軍人の視線は、しかしてその少女へは向いていない。 グラハムが見ているのは、少女では無く、ある意味でこの事態を作り上げた張本人。 ギャンブルルームのディーラーを名乗った男を見据えた表情は、その奥底に僅かな怒りすら感じさせる。 「改めて尋ねよう。『参加者のほぼ全員』が支払う事が出来る、ペリカの『代償』とはなんだ?」 グラハムが思うに、それはそう簡単に払える物では無い。 優勝後の換金制度や、このギャンブル船にて行われる景品交換制度を見てみても、ペリカという存在はそれなりに貴重な物だ。 だと言うのに、『誰でも払える何か』を用いれば容易にペリカを手に入れるチャンスが来るとは、この悪趣味な殺し合いの主催者にしては虫が良すぎる。 ならば、何らかの裏があると見るのが妥当……では、その裏とは何なのか? それがはっきりしない限り、この純粋な幼い少女の身の安全が保障されない限りは、麻雀開始を認めるつもりはない。 そして、その問いに対して黒服が口を開きかけるの当時に、車輪を回すような軽い音が部屋の中を駆け巡った。 一同の視線が、その音の発信源へと注がれる。 『ハロ、ハロ。ジュンビ、ジュンビ』 音の正体は、車輪の移動音。その何かを、麻雀台へと運んでいるのは、先ほどまで衣を楽しませていたトランプのハロだった。 彼が持っているのは長いシャフト部分。細長いそれの先にはポリビニールの袋のような物が付いており、またその反対には、鋭い針。 ハロのもう片手にはなにやら機械らしき物が抱えられており、目的地へとそれらを運び終わるのと機械と細長いそれの接続作業を始める。 なんだっけ。あれ、衣も見た事がある。 そうだ、昔、病院なんかで―― 「………代償として払ってもらうのは、『血液』だ」 先ほどまで嬉しく飛び回っていた心臓が、氷のような腕で握りつぶされた気がした。 「レートは10万ペリカ=10cc……参考までに言えば、人間の場合、平均として2000ccの採血までは可能であるとされているな……。 しかし、血液をそのままペリカに換える事は禁止する……ペリカが配布されるのは、あくまで勝負に勝利した後…結果が出た時点で、血液の採取もしくはペリカの配布を行う…」 『サイケツ、サイケツ』 ハロの無邪気な機械音声が、淡々とした説明に続く。 先ほどまではあんなに可愛らしく見えたロボットが、急に無気味な存在へと変貌を遂げたようだった。 「また、代償を血液以外に限定しているギャンブルもある……たとえば、このEカードは…」 「もういい。もう、それに関する説明は結構だ」 尚もギャンブルについての解説を行おうとするディーラーを、強引に押しとどめる。 『このギャンブルルームでの戦闘行為は禁止』。その意味がようやく理解できた。 ここは決して安全地帯などでは無い。ただ、命を奪うための手段が、『戦闘』では無く『ギャンブル』へと形を変えただけの事だ。 もしかしたら、既にギャンブルが原因で血を奪われ、命を失った哀れな参加者もいるのかもしれない。 ………これ以上、おぞましい話を聞くのは沢山だ。 (何よりも…これ以上この子を傷つけたくはない) ほんの数分前まであんなに求めていた場所を呆然と眺めている少女に心を痛めながら、グラハム・エーカーは苛立ちに奥歯を噛みしめた。 ※ 「……次に訪れた時には、ペリカを用意できている事を期待する…」 ともすれば皮肉に取れるような黒服の声にも振り向く事は無く、グラハム・エーカーは天江 衣の手を引いてギャンブルルームから退出していった。 残された一人の男は、仕組みに従いゆっくりと閉じた扉の音と立ち去って行く二つの足音を聞き届ける。 『カタヅケ、カタヅケ』 『ワハハ、アトシマツ、アトシマツ』 ふと聞こえてきた別の声に反応し、麻雀台の方を見てみれば、先ほどまで集まっていたハロ達が麻雀牌や採血器具の回収を行っているところだった。 しばらく何とはなしにそれを見ていた黒服だったが、やがてハロ達に一つの指示をだす。 「いや、片づけるのはいい…それよりも、参加者がいつ来ても対応できるように採血装置の用意だけを済ましておけ……」 『ハロ、リョウカイ、リョウカイ!』 命令を忠実に聞き届け、手分けして各遊戯台に採血装置をセットし始めるハロ達を見ながら、苛立たしげに舌打ちを一つ打つ。 無理もない。この黒服とて、こんな殺し合いの会場にたった一人で飛ばされた事に対して大きく不満を持っている。 主催者側の人間として、先ほどここを訪れた二人をはじめとした全参加者のパーソナルデータはしっかりと頭に入れてある。 つまりは、この会場には知性を持たない巨大な化け物や、簡単にこの船すら破壊する事の出来る危険人物がいる事を、彼はしっかりと理解している。 首輪による拘束が無くとも、その命は参加者と変わらず風前の灯……! 自分の身の安全は、このギャンブルルームでのみ保障されている。 もしもここから出てしまえば、脱出などを考えてしまえば…遠からず待っているのは、無残な死…! デッドエンド……! その事実を、彼はよく知ってしまっているのだ。 この場所に派遣されたのが、彼一人だけなのもそれが理由だ。 命を落とす危険がある場所に送り込む人間はたった一人で十分…帝愛はそう判断を下していた。 では、なぜそのスケープゴートにこの男が選ばれたのか? 理由は簡単だ。仕事上でミスを犯し、組織から切り捨てられた。ただそれだけの事。 帝愛が定期的に主催するギャンブル大会、それに参加したとある参加者がいた。 どうにかそれに勝ち残り、僅かながらも富を勝ち取ったはずのその参加者だったが、ツキがまだ自分にあると思い込んでしまったのか…軽率な行いから一つミスを犯してしまった。 大手を振って仲間の元へと帰ろうとした道すがら、魔が差してしまったのか別の賭博へと手を出し、せっかく得た富を全て失ってしまったのだ。 原因は『賭け麻雀』。見事にカモにされたその人物は、最早見る影も無かった。 余りにも情けなさすぎる結末。その参加者を元の場所まで送り届ける役目を負っていたこの黒服は、見るに見かねた結果、無償で自分のポケットマネーを参加者に与えてしまった。 それが、いけなかった。この帝愛の体質と最も相反する行動を取ってしまった男は、(当時の)会長の逆鱗に触れ、降格・左遷の処分を受けた。 そうした結果が、今現在の状況だ。 いつ自分の命が尽きるかもわからない会場内で拘束され、ただ参加者とギャンブルを命じられた損な役回り。 ペリカ交換用の武器類を強奪し、本格的に帝愛に反旗を翻す道もないわけでもない。 だが、それはあまりにも現実的では無い。帝愛で働いている男は、帝愛の巨大さ…恐ろしさ…決して逃げられぬ事の出来ぬ、その組織力をよく知っている。 故に、反抗を企てる気など起きる筈もない……ただ、命じられた仕事をこなし、汚名返上を図るしかない。 もしも、途中でその命を失った場合には、同じように切り捨てられた帝愛の役員が来るのか、それとも補充などは行われないのか…それは彼にもわからない事だ。 しかし、まだ完全にその命が散らされると決まったわけでは無い。 怒りや絶望を押し殺し、ギャンブルルームの主はまた新たな参加者を待ち、ゲームの終了を待ち望む。 この場から生き残れば、あるいは再び返り咲く可能性が生まれるかも知れない。 それもまた、一つの逆転(ミラクル)………。 ※ 時系列順で読む Back 運行休止(サスペンション) Next 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2) 投下順で読む Back 運行休止(サスペンション) Next 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2) 051 衣 龍門渕のロリ雀士 天江衣 079 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2) 051 衣 龍門渕のロリ雀士 グラハム・エーカー 079 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2)
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101 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/26(火) 15 00 41 ID DBXDpitM カイジ「大分競技も決まってきたな。 どれどれ……」 100m走 大玉転がし 綱引き 棒倒し 玉入れ タマ取り 障害物競争 風雲! 安土城 二人三脚 パン食い競争 フォークダンス 借り物競争 借り人競争 寒中オイルレスリング ムカデ競争 組体操 電撃イライラ迷路 チーム対抗リレー チーム対抗騎馬戦 カイジ「……なんか、あちこちツッコミ所が混ざってるような気がするんだが」 とーか「目立てば何でもアリですわ!」 102 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/26(火) 15 39 39 ID /DB6sJfY そうですか、長縄跳びはなしですか… 細かいが追加要求 スプーンレース バットまわり 運動会ライブ(鼓笛の代用) 上二つは障害物競争あたりに組み込むのもありだ 103 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/26(火) 16 23 42 ID KzxHeDzw 部長「ふむふむ」 寒中オイルレスリング 部長「?!これは…!」 17《伊達軍団》◆筆頭 ◆片倉 ◆ライダー ◆キャス ●デュオ ●五飛 ●ヴァン ●プリシラ ▲律 ▲藤乃 ▲士郎 美穂子 池田 C.C. ユフィ 玄霧 安藤 ライダー 美穂子 部長「ハァ…」ガッカリ 106 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/26(火) 18 33 51 ID oCrZzYtg 小十郎「すると競技は…」 100m走 大玉転がし 長縄跳び 綱引き 棒倒し 玉入れ タマ取り 障害物競争(スプーンレース、バットまわりetc) 風雲! 安土城 二人三脚 パン食い競争 運動会ライブ(鼓笛の代用) フォークダンス 借り物競争 借り人競争 寒中オイルレスリング ムカデ競争 組体操 電撃イライラ迷路 チーム対抗リレー チーム対抗騎馬戦 小十郎「という具合か」 小萌「そーですねー」 真宵「で、開催はいつにしましょうか」 小萌「次の月曜から本編は放送前準備ですし、その間をどどーんと使いましょう!」 小十郎「なるほど、今は凍結中だから月曜までが練習なんかの事前準備。放送案募集が始まったくらいに開始というわけか」 真宵「その間は暇ですしねー。それにその日程を早めるとハロウィンとかち合いますし、いいんじゃないでしょうか」 小萌「よーし、それでは各陣準備開始ですよー」 【死者スレ住民対抗大運動会 11月1日開始へ】
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夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下- ◆ANI3oprwOY 放送が終わると同時に風が吹いた。 髪を揺らすことさえない弱い風。 けれど、確かに吹いていた。 「なあ、コクトー」 呼ぶ。 屋上で一人、式は呼ぶ。 その声は、生きている人間には聞かれることなく風に溶けた。 「衛宮を殺したんだ。殺して……オレはたぶん、何かを失くした。 失くしたってことは、オレが殺したのはバケモノじゃなく、ヒトだったってことなのかな?」 事故防止というよりは自殺防止なのだろう。 屋上は、上部に有刺鉄線が取り付けられた3メートル近い高さのフェンスに囲まれている。 「アラヤも死んだ。浅上藤乃も死んだ。デュオの奴も、白井も死んだよ」 南側のフェンスに背中を預け、式は街を見下ろした。 どこにでもありそうな平凡な街並みと、平凡な日常では起こり得ない破壊の痕跡。 何が起こったのかは、わからないし知る術もない。 「この島で大勢死んだんだ。知ってる奴も知らない奴も、たくさん死んだ」 空を見上げる。 「……お前も、死んだ」 一面、青だった。 澄みきった、どこにでもある、とても綺麗で、ありきたりな、青。 見慣れた空と何も変わらない。 なのに、この空が彼と一緒にいた場所と、繋がっているとは思えなかった。 「けど、秋山は生きてる」 俯いて、瞼を下ろす。 瞼の裏に誰かの顔が映る、なんてことはなく。 視界は黒で覆われる。 風はいつの間にか止んでいた。 「阿良々木や枢木も生きてる。ルルーシュや平沢も、織田信長も生きてる」 完全な静寂ではない。 何かの音がする。 動いているものが存在している証の音。 「この島にはまだ、生きてる奴がいるんだ」 目を開けて、式は自分の右手を見た。 たくさんのモノを壊してきた手。 掌に、僅かに血管が浮かんでいる。そこに血が流れていることを、式は知っている。 「……オレも、生きてる」 フェンスから背を離し、自分の力だけで立つ。 深く、肺いっぱいに空気を吸って、吐き出す。 力を込めて拳を握れば、指先の当たっている部分に痛みが走った。 「生きてるんだよ」 息をしてる。 動ける。 感覚があって――――感情がある。 「オレは、生きてる」 その声は、自分の中へと溶けた。 ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ 放送が終わると同時に衣は転んだ。 二階と一階の間の踊り場。 転ぶのがもう少し遅ければ、階段から転げ落ちていただろう。 「グラハム……」 呼ぶ。 倒れたまま一人、衣は呼ぶ。 汚れてボロボロになってしまったぬいぐるみを抱きしめる。 「次の放送では、衣の名も呼ばれるのだろうな……」 呟いたのは、予想される未来。 感情とは関係のない、事実に基づいた予測。 「……グラハム」 顔が見たい。声が聞きたい。触れたい。傍にいたい。 こんな感情は初めてで、けれど初めてなのだと意識することさえないほどに自然だった。 理由なんて、わからないし知る必要もない。 「グラハム」 立ち上がろうと、手をつく。 「…ぁ……」 起き上がれなかった。 起き上がるために床についた手が何も感じない。 そこにあるはずの感触が、掴めない。 「え……?」 感覚がない。 それは、世界を感じられないことと同義。 自分がここにいるのだということにさえ、自信が持てない。 何もかもが遠くなっていく。 「……衣は、そちら側か」 死んでいった人たちの顔が見える。 きっとそれは幻で。 けれど手が届きそうなくらいに近い。 「グラハ――――」 呼ぼうとして、やめた。 訪れるのは静寂。 何も聞こえない場所で、何も感じない身体をぬいぐるみごと抱きしめる。 「……衣は、まだ生きている」 採光用の窓から差し込む光に翳すように、衣は自分の右手を伸ばす。 小さな手。何もできない手。 貧血の所為かいつもより白い。まるで血の通わない人形のようだと、衣は思う。 「生きているんだ」 それでも。たとえもうじき終わってしまう命だとしても。 まだ、続いている。 もう一度、起き上がるために床に手をつき、力を込めた。 「衣は、生きている」 その声は、どこへも辿り着かない。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下- ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「今から約一時間半後に、天江衣の首輪は爆破されます」 ……さて。僕、阿良々木暦は、いったいどれくらい硬直していたのだろうか。 25日くらい経ったような気がする。さすがに気のせいだろうけど。 僕は馬鹿みたいに放心していた。何も考えられなくなっていた。 一応放送は聞いていたけれど、その内容についてあれこれ考えるなんて無理だった。 数分かけてようやく動きだした僕がしたのは、主催者の一味―――元・主催者の一人である インデックスの小さな肩に掴みかかることだった。 「何だよそれ、いったいどういうこと―――」 言おうとして、止まる。 一拍どころじゃなく遅れて言葉の意味を理解しだした僕の脳が、これに関連する出来事を追憶する。 それはずっと考えていたことではなかったか。 あの時、何故あの救済は行われたのか。 ……あらゆる線が結ばれていく。全てに納得がいくようになる。ふざけるほどに、辻褄が合ってしまう。 「……おい、まさかそれって」 「はい。薬局での白井黒子の治療の際、借金として彼女が肩代わりしたものです」 以上でも以下でもない、予想通りの答えだった。そして最も外れて欲しかった答えだった。 一人でも多く人が死ぬことを推奨するルールの中で、負傷者の傷を治すという行為。 白井の命を助ける代償に天江の命を担保にかける。そしてこの場で効率的かつ効果的な首輪による爆死。 最低の発想が、最悪のタイミングでやってきてしまった。 「天江衣の借金は1億ペリカ。12時間以内、7時32分までという返済期限でしたが、 定時放送毎に利子として借金を倍額していますので、現在負債は4億ペリカとなっています」 「そのことを……グラハムさん達は……」 「知り得ていません。本人が借用について他の参加者に話すことは違反行為として禁じられています。 また、特例的に知ったあなたが発言することも規則に抵触するため留意下さい」 「もし、誰かに話したら?」 「首輪が爆破されます」 「……」 傷を負った白井も、その代価を請け負った天江も、責める気はない。 こんな先のことまで考える余裕は天江にはなかった。いや与えられなかった。 彼女はただ助けたかっただけなのだ。 それだけが―――こんなにも。重くなってのしかかる。 全てはこうなるように仕組まれたこと。 その片棒を担いでいる目の前の少女に八つ当たりすることもまた違う。 けれど。 「それなら―――」 どうして、僕に話した? 僕一人が知ったところでどうなるわけでもないとタカをくくってるのか。否定できない自分が憎い。 けど、だったら言わなくても同じことだろう。 この場で、この状況で伝えたところで、いったい何が変わるというのか。 「……………………」 インデックスは、語らない。 答えられないのか。答えたくないのか。答えを知らないのか。 なんにせよ、今ここで打ち明けてくれる様子ではない。詰め寄っても求める答えは聞けなさそうだ。 理由を話せないのならばそれでいい。それを知ったところで僕が納得するだけでしかない。 だったら、聞くべきはその先。この事態の解決法だ。 「どうすればいい?」 ただ不安を煽るだけでこの話を持ちかけたわけではない、と思う。 その意図が悪意にしろ善意にしろ、打開の行動ができるだけのアテがあるはずだ。 主催の手から逃れたというのが本当であれば、ここは頼るしかない。 「…………黒の騎士団」 開いた口から出てきたのは、謎のネーミング。 「ルルーシュ・ランペルージが指揮する集団。彼らなら首輪を技術的に解体する情報を入手している可能性があります」 それだけ言うと、インデックスはもう用は済んだと言わんばかりに僕に背中を向け、天江が向かった方向へと歩き出す。 僕はただ、その後ろ姿を見ていた。 本当はすぐにでも追いかけるべきだったんだろう。 天江にしろインデックスにしろ、この状況で一人にするのは好ましくない。 けれど。この時の僕はそんな簡単なことさえ思いつかずにいた。 僕は考える。 黒の騎士団―――かなり、相当、僕だったらちょっと口に出すのを躊躇うくらい恥ずかしいネーミングだけれど、ツッコミは控えるとして。 7時32分までに彼等をみつけだすことはきっと不可能じゃない。 だけど、会えるかどうかと、合流し協力できるかは別の問題だ。 グラハムさんは、ルルーシュ達に思うところはあるみたいだけれど合流に関しては肯定的だ。 天江も異論は無いみたいだし、枢木はルルーシュとの合流が最優先事項。 式にしても、合流の邪魔はしないだろう。 問題は、僕だ。 僕たち5人の中で唯一ルルーシュや平沢と明確に対立した僕が―――― 「なにやってんだ?」 声がして、慌てて振り返る。 そこには式が立っていた。 もの凄くやる気無さそうに、式が…………式が…………………… 「なあ、式! おまえ、首輪外せないのか!?」 「できない」 いきなり質問をして、あっさりと一刀両断される男子高校生がそこにはいた。 ていうか、残念なことにそれも僕だった。 ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ 並び立つガンダムエピオンとランスロット・アルビオン。 その足元では、二人の軍人が作戦会議を行っていた。 「首輪は解除できないか………」 試してみたものの、式には首輪を外すことはできなかった――― 放送前に式と会えたというスザクからの報告に、グラハムは落胆を隠せない。 思いつく限りの首輪解除の条件は整っているはずだ。それでも、首輪の解除には届かない。 ディートハルトに問い詰めても、首輪の製作は別部門で行われていたので一切知らないと言って憚らない。 「我々の推測は根本から間違っていたと考えるべきか」 「いえ。そう判断するのはまだ早いと思います。式は「"まだ"視えない」と言っていた。つまり―――」 「―――いつかは視える。そういうことか」 「その可能性はあります」 「待てるのか? 来るかどうかもわからない"いつか"を」 「待てません。だからこそ、情報を持っているかもしれないルルーシュ達との合流を急ぎたい」 スザクの言葉に、グラハムは同意を示す。 グラハムは、一刻も早く首輪を解除したかった。 首輪が爆破されるかもしれないという危惧は、今までに増して強くなっている。 参加者の残り人数。 インデックスと遠藤が行っているように見せかけることは可能だったはずなのに、変えられた放送の担当者。 主催が何らかの動きを見せてもおかしくない状況下で、自分達は『主催陣営の裏切り者』という爆弾を抱えているのだ。 「しかし……無事に彼らの元へ辿り着ける見込みは低い」 「わかっています。信長がこの付近まで来ている可能性は高い。放送を信じるならば、アリー・アル・サーシェスも生きている」 「そして、一方通行、か」 スザクは頷く。 「――如何にガンダムといえどもすべての攻撃を反射されたのでは勝ち目がないな」 「ええ。……ですが、彼の反射は完全ではありません」 第一に両儀式の存在。彼女の攻撃はどういうわけか一方通行の反射が通用しない。 反射を殺している、と彼女自身は言っていたが、理解の範疇外なので二人は深くは考えない。 ただ単純にここでは両儀式ならば攻撃を当てる事ができる、ということを理解していればいい。 第二に枢木スザク。両儀式ほどに完全な対応ができるというわけではないが、反射の法則を捉えた。 結果、肉弾攻撃ならば反射に捕まること無く攻撃をすることができるだろう。 第三に特別な武装。GN兵器の攻撃が通用したことから、どうやら彼の世界に存在しない物質による攻撃は透過するらしい。 そのような武装がどれだけ存在するかは分からないが、ひとつの手段として覚えておいて問題ないだろう。 第四に制限時間。あれほど強大な能力であるから、主催者によって制限がかけられているらしい。 能力の連続使用時間はさほど長くないことが分かっている。 その使用時間さえ使い切らせてしまえば、彼自身の身体能力は低い。さほど苦労せずに仕留められるだろう。 「……とはいえ、君や両儀式を単純に向かわせたのでは絶対に勝てるという保証はない」 「そうですね。彼の能力は最強の盾にして矛でもある。攻撃が届くだけで勝てる相手ではないでしょう。 ……何より、彼は頭が切れる。ただの能力だよりの狂戦士ではないでしょう。僕もそれで一度敗れた。 薬局であれだけの人数が生き残れたのはむしろ幸運だったと言えるかも知れません」 二人で情報を整理しながら作戦を立てる。 スザクは自らの目的、ゼロレクイエムへの障害のために。 グラハムは、今度こそ天江衣をしっかりとこの手で守るために。 たとえ最強であろうとも、一方通行を打ち倒すという信念を蒼く燃やす。 「……なるほどな。最強の矛と盾。ただし、制限時間付きか」 「――何か思いついたんですか?」 ふ、と口元を綻ばせるグラハムを見て、スザクは尋ねる。 「ああ……ならばこちらも用意してやればいい。矛と盾を、な」 勝機を見出し、悪魔の機体を見上げるグラハム・エーカー。 その耳に、微かに届いた声があった。 「…………天江、衣…?」 振り返る。 見えるのは校舎だけだ。そこに衣の姿はない。 声が聞こえるはずがない。 けれど、たしかに――― 「スザク。ここは君に任せる」 それだけ言って、スザクの返事を待つことなく、グラハムは走り出した。 ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ 「まだ視えない」 式のこの言葉が、首輪解除についての現時点での結論だった。 モノを殺すという物騒な式の力と、魔術を解くという折れ曲がった短剣―――少なくともこれだけでは、首輪を外すことは叶わないらしい。 もともとあの短剣と式の力は殺し合い開始の最初から同じ場所にあったという、確かにそれで外れるというのはおかしな話ではあったけれど。 考えてみれば、今の僕らに首輪の解除が可能なら、インデックスは僕にあんな話はしなかっただろう。 彼女はできないと知っていたのだ。 そして今、全ての情報はただひとつの方向を向いている。 つまり、ルルーシュ・ランペルージ率いる黒の騎士団との合流は必須事項ということだ。 やるべきことはわかった。理解できた。 わかってしまえば簡単なことだった。 ルルーシュの元へ向かうのも、首輪の解除について考えるのも予め決まっていたことで、動きが変わることはない。 変わるとすれば、僕の心境。 天江が背負っているものを知らなければ楽だったかもしれない。 けれど、知っておかなくてはならなかった。 息が詰まり、心が絞めあげられるが、構いはしない。食いしばって耐えられる。 ……なんてことを僕が考えている間、式は職員室の中をただ見つめていた。 「なあ、式。インデックス達のことなんだけど」 「放送の前に枢木に会った」 僕が言いかけた台詞とは噛み合わない言葉が返ってくる。 少し考えて、枢木からインデックス達の件は話を聞いているということなんだろうと思い至った。 式との会話は難しい。 「その……いいのか?」 「なにが?」 「一緒に行くんだぞ、主催だった連中と。その……憎い、とか。そういうの、ないのか?」 「べつに」 本当に、なんとも思っていないようだった。 僕だって殺してやりたいくらい憎いとか思っているわけではないけれど。 だけど式みたいにあっさりと言ってのけることができるほど、割り切ってるわけでもない。 「殺したのは、浅上だ。主催(あいつら)じゃない」 唐突に、そう言われて。 僕は式の視線の先を見る。 そこにあるのは、かつて人だったモノ。加治木ゆみという名の少女の死体。 「殺し合えって言ったのはあいつらだけど、殺し合ったのはあいつらじゃない」 式は歩きだす。 躊躇いを感じさせない足取りで、職員室の中へと。 血痕を踏み、もしかしたらバラバラになった加治木ゆみの肉片さえ踏んで。 そして、顔の皮膚を剥がれた頭部のそばで足を止めた。 「なあ」 聞き違いかと思うほどに小さな声。 たった二文字の簡素な言葉は、だけどたしかに、式が僕へと発した声だった。 「こいつにも」 「え?」 「こいつにも、ユメはあったのかな」 ひどく、幻想的な問いだった。 夢―――目標、願い、望み、将来、未来、希望、欲望。言い方は数あれど、おおむねそういう意味だろう。 僕は加治木ゆみがどんな人間なのかを知らない。 だけど、きっと。 「……あったんじゃないかな、彼女にも夢が。たぶん他のみんなにも」 「おまえは?」 式の質問の意図はわからないままで、だけど、見るからに人付き合いが苦手、いや嫌いであろう式が 自分から誰かに話しかけるなんておそらく滅多にないことだろう。 式にちゃんと答えたい。たとえその答えが、声に出すだけで泣きたくなるようなものだったとしても。 僕にとっての夢は――― 「あったよ。とても小さいものだったけど」 羽川や火憐や月火や忍や忍野もいて。 神原や千石や八九寺もいて。 …………戦場ヶ原が、いて。 勉強したり遊んだり遊ばれたり、たまにちょっと面倒なことに巻き込まれたりする、有り触れた日常。 そんなささやかな未来を、僕は望んでいた。 「今は、もうないけどな。消えて…………死んだんだよ、僕の夢は」 全ての事象に終わりはある。出逢いは別れに、生は死に。 それでも、こんなにも不条理に破壊されてしまうことなんて、考えもしなかった。 煌びやかな日々は握り潰され、抱えられるだけの残骸もない。 「おまえは、これからどうなるんだ?」 僕のほうを見ることもなく、式はなんでもないことのように尋ねてくる。 どう動くかという行動ではなく、自分がどうなってしまうのかという状態を。 夢を失ったら、人はどうなってしまうのか。 「そう、だな……………………どうにもならないんじゃないか」 そう。きっと、どうにもならない。 失くしてしまったモノは戻らない。死んだモノは生き返らない。 代わりは無い。 僕は他の夢なんて、もう見れない。 ただ、決して埋まらない苦しみに。怒りに。悲しさに。心と身体を苛まれるだけだ。 だけどそれは夢を見ていた証だから、幸せだった証だから。 夢を失くしたことを不幸だと思うことはあっても、失くした夢に永遠に縛りつけられることを不幸だと思うことはない。 どんなに苦しくても。 ………こんなに苦しいのに。 それでも僕は、解放されたいと望むこともできやしない。 「けど、夢をなくした今でも、死にたいとは思えないし死ねない理由もある。 残ったものを見捨てて投げ捨ててしまうことはできない。僕の死が誰かの夢を奪うことになるってわかってるから。 それなら、生きる意義ってのもあるんじゃないのかな」 これが、僕にできる精一杯の答えだった。 「そうか」 それだけ言うと、式はもう加治木の死体にもそばにいる僕にも興味がないといった様子で、教室を出ていった。 話は終わり、ということらしい。 そろそろ出発だろうし、一緒にグラハムさん達のところまで行こうと誘おうと思ったけど、やめた。 式はそういうのは好まないだろう。 天江やインデックスが向かったのと同じ方向へ歩いていく式の後ろ姿を見送って、僕は反対側の階段へ向かうために踵を返す。 失くしてしまった夢だとか、平沢が犯した罪だとか、天江が背負っている運命だとか。 いろんなものが重くて苦しいことに変わりはないけれど。 やるべきことがわかった。 式と話ができた。 たったこれだけのことで何かを悟ったような気になって、なんとなく満足してしまっている馬鹿な男子高校生がそこにはいた。 ていうか、こういうのが僕だった。 時系列順で読む Back わたしとあなたは友達じゃないけど(後編) Next 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 投下順で読む Back わたしとあなたは友達じゃないけど(後編) Next 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 291 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 阿良々木暦 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 291 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 天江衣 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 291 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 両儀式 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 291 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- グラハム・エーカー 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 291 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 枢木スザク 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 294 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- ディートハルト・リート 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編) 294 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- インデックス 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)
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558 :名無しさんなんだじぇ:2011/10/30(日) 06 50 01 ID .rtOy0/I 美穂子「嫌だわ、磨り潰さないと」 池田「キャプテン?なに渋い声出してるんですか?」 美穂子「うぅん、なんでもないの。ところで華菜?これを御坂さんに届けてくれないかしら」 池田「了解だし!」 【続くとしてもだいぶ後になってから】
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それは、黒く燿く意志 ◆NaOxi39aYw ショッピングセンターを目指して南下していた海原光貴は、進路方向の上空に人影を見つけた。 それも二人分。変則的な軌道で飛び回っている。 暗くて良くは見えないが、どうやら飛べる方が飛べない方を振り落としたようだ。 続く急降下と、 ――ォォォォン ほんの少し遅れて地響きが伝わる。 「さっそく始めているのですか。殺し合いがこんなに簡単に行われているなんて、御坂さんは大丈夫でしょうか」 海原は思わずため息を漏らした。 (いや、自分なんかよりも彼女はよっぽど強いですし、いくら心配したところで彼女にとっては迷惑なだけでしょう。) ――それでも、彼は彼女の身を案じずにはいられない。 海原はもう走り出している。 殺し合いに乗っている危険人物は排除しなくてはならない。ショッピングセンターは目と鼻の先だが、悠長に買い物している場合ではなかった。 ◇ E-1エリアは最初に海原が飛ばされた岬を最高になだらかな傾斜があり、F-1エリアよりも少しだけ高い丘である。 地図にある橋が、ただの橋ではなくてつり橋だったのもそのせいだ。 この島では基本的jに火山のある方角から海に向かって高低差があると思って良いだろう。 幸運なことに、海原はさほど近づくまでもなく戦闘現場を見渡すことができた。 もちろん、周囲が薙ぎ倒されて開けた場所になったのと、何よりも人物の縮尺のおかげだったが。 そして。 海原の出番がくるまでもなく、じきに戦闘は終了した。 破壊の嵐が吹き荒れた戦場に立つのは1人だけ。 一方は、南東の海上へと撤退していく。 他方は、飛び去る敵に向かって吼え続けている。 海原はブレザーの下に納めた拳銃を強く握り締めていた。 手のひらがじっとりと汗で濡れている。 残る巨人はこちらに気がついていない。 無防備な背を向けて、未だ海上の敵と睨み合っている。 ――行くなら、今しかない。 ◇ 結局のところ。 海原は踵を返して、見つかる前に離脱する他なかった。 今は、ただひたすらに走りつづけている。 ◇ 「ショッピングセンターでの戦力補強はもうダメですね。 地形を考えても、巨人は自然と近いそこへ向かってくるだろうし、あの広い空間で目的の物を探すのは時間がかかります」 探しているうちに遭遇する訳にはいかない。 少なくとも、彼に対抗し得る武器が手に入るまでは。 「それに、刃物とロープならば別にショッピングセンターでなくとも手に入りますしね」 走りながら探していたものを、手ごろなアパートの一階で見つけると、海原はすかさずベランダに飛び込む。 街中同様に、部屋の中にも人はいない。 ベランダに架かっていた長さ5m程の洗濯ロープを二本、ついでに干してあったタオルを数枚回収する。 そのまま窓から侵入。乱雑で狭い部屋を抜けて、キッチンへと辿り着く。 こちらもすぐ見つかった。 特別よく切れるわけではない、ありきたりな包丁。だが、それでも十分。 鞘は無かったので、柄ごとタオルを巻いてズボンのポケットへ仕舞い込む。 これで、とりあえずの準備は出来たと言えよう。 一息ついたところで先の光景を思い出す。 「それにしても……あれが聖人というものなのでしょうか。 ヒトという枠を大きく逸脱しています。 もう一方は学園都市製の駆動鎧……? それもサイズが桁外れな上、見たこともないタイプですが」 まさに巨人。それより更に頭一つ分大きな方は、フォルムも相まってもはやちょっとしたSFロボットの領域だ。 実際のところ、海原が目撃できたのは戦闘終了間際のほんの僅かにすぎない。 しかし、彼らと周囲の禍々しい痕を見ただけで、十分だった。 武器は手持ちの拳銃だけ、それであの距離ではどうにもならない。 彼らを仕留めるには遠距離からロケットや機関砲を叩き込むしかないだろう。 「殺し合いに乗った危険人物の排除、ですか」 自分の甘さを痛感する。 拳銃なんて物がまるで役に立たない参加者が、現に二人も、こうして暴れまわっている……! 自分の理解を超えた参加者は、きっとまだ大勢いるのだろう。 「やはり、最優先であの魔術を使えるように動くべきでしたね」 今は使えないが、海原には彼らを倒し得る術がある。 例えば、ある魔術師が「水性インクでルーンを刻んだカード」を用いて『魔女狩りの王』を使役するように。 海原光貴は「黒曜石のナイフ」を使って『トラウィスカルパンテクウトリの槍』を放つことができる。 それはどんなものでもバラバラに分解するという必殺の術だ。 「黒曜石のナイフがあれば……、『トラウィスカルパンテクウトリの槍』の術式ならば……!」 手元に無い物をいつまでも悔やんでいるわけにはいかない。 そんな暇があるなら、黒曜石を入手し得る可能性を考えるべきだ。 ところで、黒曜石とは火山岩の一種である。 割れやすいが、それ故に鋭い切っ先となる加工しやすい石。 原始人が扱う石器素材として有名で、世界各地でナイフや矢じり、槍の穂先などの石器として長く使用された。 一説にはアステカが強大な軍事国家を作れたのは、この黒曜石の鉱脈を豊富に掌握していたからだともいう。 そう、「黒曜石のナイフ」には考古学的史料価値があるのだ。 ならば――博物館といった施設があれば展示されているのではないか? そこまで考えて、地図上にそんな施設が記されていないことに落胆する。 (……いや、学校はどうでしょうか? なにも専門の研究施設でなくとも良いのです。ある程度以上の学校ならば資料として置いて在るでしょう。 或いは、歴史ではなく地学の分野でも、岩石標本という手があります。 ナイフでなくとも、矢尻や穂先、いっそ岩石でも「黒曜石」であれば構いません。 流石にそのままでという訳にはいきませんが、原始の人間にできて現代の自分に出来ぬ道理はありませんね。) 「小学校ならアウト。しかし中学校以上なら目があるはずです。 この島には学校が少なくとも二つはあります。どちらかで当たりを引ければ良いのですが」 他には……と考えて、線路に目が留まる。 (この路線、東西の市街を結ぶのが便利だろうに、それよりも何もない山間部を優先してありますね。 それも村や墓地といった施設を無視し、トンネルを掘ってまで。それは何故でしょうか。) 「おそらくは、資源を輸送する為でしょう。工業や宇宙開発のエリアには必須です。 地下資源か、もっと別の何かかもしれませんが、周囲にはなんらかの採掘場があるはずです」 もしかしたら。 実際に火山の周辺で石器が出土している以上、この島でも黒曜岩が見つかることがあるかもしれない。 帝愛グループとやらが、わざわざ火山のある島を選んだ理由も気にはなる。 「決まり、ですね」 まずはE-2及び、E-7の学校を回って、それでもダメならば火山へと足を延ばす。 ちょうど線路に沿った形での移動になる。当然ながら多くの参加者と接触するだろう。 情報収集にも励まなければならない。もちろん、殺し合いに乗っていなければ、だが。 自然と銃へ手が伸びる。 「あぁ、他の参加者に支給されている可能性もありますね。 その場合はなんとしても譲ってもらいましょう――この銃弾と交換してでも。」 ◇ 魔術とは、才能の無い人間がそれでも才能ある人間と対等になる為の技術。 魔術を欲するのに今ほど相応しいときがあるだろうか。 なんとしても魔術を取り戻さなければならない。 彼らを放置していては、その凶刃がいずれ彼女に迫るかもしれないからだ。 それだけは。 それだけは、何があっても許されない! 魔術師殺しの彼では、かの純然たる暴力の塊には適わないだろう。 自分がやるしかないのだ! ◇ 彼は、ひたすらに走りつづける。 脅威から逃げるのではなく、取り除くために。 そして現在はE-2の中心部。 「もう少し、ですね。学校や駅を目指して人が集まっている可能性があります。気を引き締めて行きしょう。」 一度呼吸を整えると、海原はまた力強く足を踏み出す。 自分が頑張れば頑張った分だけ、それは彼女の安全にも繋がる。そう信じて。 【E-2/中心 住宅地/一日目/深夜】 【海原光貴@とある魔術の禁書目録】 [状態]:健康、疲労(小) [服装]:ブレザーの制服 [装備]:S&W M686 7ショット(7/7)in衝槍弾頭 包丁@現地調達 [道具]:支給品一式、コイン20束(1束50枚)、大型トランクケースIN3千万ペリカ、衝槍弾頭予備弾薬35発 洗濯ロープ二本とタオル数枚@現地調達 [思考] 基本:御坂美琴と彼女の周りの世界を守る 1:なんとしても黒曜石を調達する 2:人と出会い情報を集める 3: 殺し合いに乗った危険人物、特にバーサーカーと本多忠勝の排除 [備考] ※この海原光貴は偽者でその正体はアステカのとある魔術師。 現在使える魔術は他人から皮膚を15センチほど剥ぎ取って護符を作る事。使えばその人物そっくりに化けることが出来る。海原光貴の姿も本人の皮膚から作った護符で化けている。 ※F-1で目撃できたのは、バーサーカーの再生よりも後からです。 時系列順で読む Back 今は亡き王国の姫君 Next 凶壊ロゴス(1) 投下順で読む Back 涙――tears―― Next 凶壊ロゴス(1) 010 我が身の全ては想い人の為に 海原光貴 082 こんなにロリコンとシスコンで意識の差があるとは思わなかった……!
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174 :名無しさんなんだじぇ:2010/11/08(月) 02 45 21 ID cnQ2wHZI 【第五回放送を見て…】 部長「和…」 和「あれしか方法がないんです…あれしか…」 とーか「本当にいやらしいところを付いてきますわね、あの黒い神父!」 かじゅ「選択肢をわざと狭めて見せて後戻りできないようにする…まさに詐欺師の商法だな」 美穂子「精神的に追い詰められていると、アレは本当にどうしようも出来ませんから…」 池田「キャプテン…」